Voice APIで何ができるか——SaaS型IVRとの違いと、自社に合う使い方の選び方

音声通話・IVR・SMS連携を既存システムに組み込む実務ガイド
Voice APIと既存のSaaS型IVRは何が違うのか、どちらを選べばいいのか——この判断を整理したい開発・情シス担当者向けに、Voice APIの主要機能・向いている企業・運用のポイント・NTT CPaaSの特徴を実務目線でまとめています。

鈴木 伸吾(監修)

鈴木 伸吾(監修)

コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「音声機能を自社のシステムに組み込みたいけれど、IVRツールで十分なのか、APIを使う必要があるのか判断できない」——このような課題を持っている担当者は多いのではないでしょうか。
Voice APIはその名の通り、音声通話に関する機能をAPIで呼び出せる仕組みです。通話の発着信・IVRによる自動振り分け・音声認証・通話録音・SMS連携といった機能を、自社の既存システムやアプリケーションに後付けで組み込むことができます。

SaaS型のIVRツールとの最大の違いは「自由度」です。管理画面の設定範囲内でしか動かせないSaaS型と異なり、Voice APIはビジネスロジックを自由にできるため、CRMとのリアルタイム連携・独自の振り分け条件・他システムとの複合フローが実現できます。その代わり、実装にはエンジニアが必要です。

この記事では、Voice APIで何ができるか・向いている企業と向いていない企業・サービスを選ぶときに見るべきポイントを整理しています。

まず確認:API型とSaaS型、どちらが自社に合うか

Voice APIを導入するかどうか以前に、「API型とSaaS型のどちらが合うか」を最初に判断する必要があります。

  API型(Voice API) SaaS型IVRツール
向いている企業 エンジニアがいる・CRM連携など複雑な要件がある 開発不要で始めたい・シンプルな振り分けで十分
自由度 ビジネスロジックを自由に設計できる 管理画面の設定範囲内
CRM連携 APIでリアルタイム連携可能 標準連携のみ(サービスによる)
導入ハードル エンジニアの実装が必要 管理画面だけで設定できる
向いていない企業 開発リソースがない・シンプルな用途のみ 複雑な連携・独自ロジックが必要

判断の分かれ目:「CRMや予約システムと連携して、顧客情報を参照しながら振り分けたい」「複数システムをまたぐフローを設計したい」「自社サービスに音声通話機能を実装したい」という要件があればAPI型が向いています。「自動振り分けを試してみたい」「開発部門を通さずに設定を変えたい」ならSaaS型から始めるのが現実的です。

Voice APIの主要10機能——何ができるか

Voice APIの主要10機能——何ができるか

機能ごとに「何のために使うか」をまとめます。自社の課題と照らし合わせながら、必要な機能を絞り込んでください。

機能 できること 代表的な用途
1. 音声通話 アプリ・Webから発着信を制御 コールセンター、アウトバウンドコール
2. Voiceメッセージ 録音音声・Text to Speechでメッセージ配信 督促・キャンペーン案内
3. IVR(自動音声応答) 着信を自動振り分け 問い合わせ一次対応
4. Click to Call サイト上のボタン1つで通話開始 ECサイト、問い合わせフォーム
5. 通話録音 会話を自動保存・管理 品質管理・コンプライアンス
6. Text to Speech(TTS) テキスト→自然音声に変換 IVRガイダンス、24時間自動応答
7. 音声による本人認証 音声でワンタイムパスワードを伝え二要素認証 ログイン、本人確認
8. 音声認識 通話をリアルタイムでテキスト化 議事録作成、応対分析
9. 音声ストリーミング(Speech to Speech) 通話音声をWebSocket経由でリアルタイム転送 AIリアルタイムアシスト・ライブ通話品質モニタリング・翻訳
10. 音声キャプチャー 発話内容のキーフレーズを検出して最適窓口へ自動接続 音声IVR(用件を話してもらうだけで自動振り分け)

各機能の実務上のポイント

1.音声通話:電話機能を既存システムに後付けできる

既存のコールセンターのシステムや自社サービスに、電話の発着信・保留・転送といった機能をAPIで組み込めます。通話ログもAPIで取得できるため、CRMへの自動記録も設計次第で実現できます。

2.Voiceメッセージ:人手ゼロで確実に届ける

録音済みの音声やText to Speechで生成した音声を、リストへ一斉発信できます。督促・キャンペーン案内・予約リマインドなど、同じ内容を大量に届けたい用途に向いています。

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3.IVR:24時間自動で「最適な窓口」へ誘導する

着信した電話を自動音声で受け付け、用件や時間に応じて適切な部署や担当者へ振り分けます。「1番を押したら営業、2番を押したらサポート」という設計の基本から、顧客情報を参照して動的に振り分ける高度な設計まで、APIで制御できます。

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設計上の注意として、選択肢の階層が深くなるほど途中で電話を切られやすくなります。1階層3〜4項目以内を目安にし、複雑な要件はSMSでWebへ誘導するフォールバックと組み合わせるのが実務上の定石です。

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4.Click to Call:「かけ直し離脱」をなくす

WebサイトやアプリのボタンをタップするだけでECサイトのサポート窓口などに直接つながる機能です。電話番号を手入力する手間がなくなるため、問い合わせ前の離脱を減らせます。通話履歴はAPIで取得できるため、「どのページから発信されたか」をCRMに記録する設計も可能です。

5.通話録音:品質管理とコンプライアンスの基盤

顧客とのやり取りを録音し、自動保存できます。IVRと組み合わせれば、録音データをオペレーターの研修素材にしたり、通話品質のモニタリングに活用したりできます。録音データの保管コストと保管期間のルール決めは、運用開始前に確認しておくべき点です。

6.Text to Speech(テキストを自然音声に変換する):24時間対応を最小コストで

テキストを自然な音声に変換する機能です。IVRのガイダンスや自動応答メッセージに使います。近年のAI音声合成は精度が高く、「機械音声だから聞き取りにくい」という体験は改善されています。肉声に近い自然な音声品質のサービスを選ぶことが、顧客の安心感につながります。

7.音声による本人認証:スマホを持たないユーザーにも対応できる

SMSやメールでの認証が難しい顧客(固定電話しか持たない・スマートフォンに不慣れ)に対して、音声で認証コードを読み上げる方式です。金融サービスや行政手続きなど、セキュリティ要件が厳しい用途での採用が多いです。

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8.音声認識:通話を分析できるデータに変える

通話内容をリアルタイムでテキスト化します。手動の文字起こし作業がなくなるほか、テキスト化されたデータをキーワード検索したり、感情分析に活用したりできます。クリアな音声・標準語であれば90〜95%以上の認識率が一般的です。業界専門用語が多い場合はカスタム辞書の登録で精度を補えます。

9.音声ストリーミング(Speech to Speech)——通話音声をリアルタイムで外部システムへ

通話中の音声データをWebSocket経由で外部システムに双方向でリアルタイム転送する機能です。通話音声をその場でAI音声処理エンジン・文字起こしサービス・感情分析システムなどに流し込み、結果をオペレーター画面にリアルタイム表示したり、通話中に自動でCRMへ書き込んだりする設計が可能になります。

双方向転送のため、AI生成の音声応答をそのまま通話に割り込ませるリアルタイムアシスト設計にも使えます。コールセンターでのリアルタイム応対支援、通話品質モニタリング、ライブ翻訳といった用途に特に有効です。

10.音声キャプチャー——「用件をどうぞ」の一言で最適な窓口へ自動接続

顧客の発話をそのまま音声認識してキャプチャし、キーフレーズを瞬時に検出して最適な窓口へ自動接続する機能です。従来のIVRが「1番を押してください」という番号入力で振り分けるのに対し、音声キャプチャーは「用件をどうぞ」と問いかけて顧客が話した内容(「料金について」「解約したい」など)をそのまま判定します。

ユーザーが選択肢を覚えて番号を押す手間がなくなるため、IVRの途中離脱率を下げる効果があります。特に問い合わせ種別が多く番号入力の階層が深くなりがちなサービスで、UXの改善手段として有効です。

導入後の効果

Voice APIを組み込むことで現場が変わりやすいのは、主に3つの場面です。

電話対応の「定型部分」をシステムが担う

「営業時間は〇時〜〇時です」「担当部署に転送します」のような定型応答は、IVRが24時間自動で対応します。オペレーターは本当に人が判断すべき案件だけに集中できます。繁忙期の入電集中が緩和されるため、応答率の改善が期待できます。

顧客情報と通話が連動する

CRMとAPIで連携すると、電話がかかってきた瞬間に顧客情報が画面に表示される・通話終了後に対応内容が自動で記録される、といった設計が可能になります。「電話で聞いた内容をメモしてあとでCRMに入力する」という手作業がなくなります。

データが蓄積されて改善できるようになる

通話録音・音声認識・IVRの選択ログが蓄積されることで、「どの時間帯に入電が集中するか」「どのメニューで離脱が多いか」「どんな言葉でクレームが始まるか」が数字で見えるようになります。勘や経験に頼っていた改善が、データで判断できるようになります。

サービスを選ぶときに確認すべきこと

図:サービスを選ぶときに確認すべきこと

一般的な「安定性・セキュリティ・料金」はどのSaaSでも共通の確認事項です。ここではVoice API特有の確認ポイントに絞ります。

国内ルート(国内直連網)の通信品質が確保されているか

海外ルート(国際中継網・海外サーバー経由)を経由するサービスでは、音声の遅延や品質の不安定が起きやすくなります。国内ルート(国内直連網)は、通信品質(遅延・音質・接続安定性)が安定しています。督促・安否確認・認証など「確実につながること」が重要な用途では、この点が品質の前提条件になります。

また、国内の電話番号を利用できるかも重要なポイントです。APIを使って発信する場合、海外ルートのサービスだと発信元が「海外の番号」になってしまいます。不信感からすぐに切られてしまう可能性が高く、実際に警察庁からも海外からの電話による詐欺への注意喚起が出されています。そのため、国内番号が使えるかどうかは、API発信の成果に直結する必須の確認事項です。

着信(電話を受ける業務)で利用する場合も、現在の電話番号を変えずにそのまま導入できるかを、サービス担当者だけでなく電話番号の発行会社(通信キャリア)にも確認する必要があります。特にPBX(構内交換機)などの既存システムと連携させる場合は、電話がかかってきた際の「着信経路や処理の流れ(ルーティング)」の確認が絶対に欠かせません。

CRMや他システムとの連携設計がどこまで柔軟か

WebhookやAPIのイベント粒度(どのタイミングで・どんな情報が取得できるか)は、連携設計の自由度に直結します。「通話開始・終了・IVR選択ごとにデータを取れるか」を確認してください。イベント粒度が粗いと、CRMへの記録が不完全になったり、障害発生時のログ調査に時間がかかったりします。

サンドボックス(検証環境)が提供されているか

Voice APIは実装前の動作確認が重要です。サンドボックス環境があれば、本番環境に影響を与えずに機能検証ができます。本番と同じ挙動を検証できる環境の有無が、開発・導入フェーズのスムーズさに影響します。

日本語サポートの実務上の重要性

障害時に英語での問い合わせ対応になる海外CPaaSと異なり、日本語で即日対応できるサポート体制があると、トラブル発生時の復旧速度が変わります。法的確認(特定商取引法・個人情報保護法対応)を日本語でできるかどうかも、担当者の負担に関わります。

NTT CPaaS「Voice API」について

NTT CPaaS「Voice API」は、音声通話、IVR(自動音声応答)、音声認証、AIボット連携などの音声通話機能をAPIで実装可能です。NTTグループの国内音声基盤により、低遅延で安定した通話品質を提供しています。

たとえば、顧客管理(CRM)システムと連動させて通話履歴をリアルタイムに記録したり、自動音声の後にSMSを自動で送ったりする仕組みを一元管理できます。さらに、ノーコードツール「Moments」を組み合わせることで、プログラミングの知識がない現場のスタッフでも、自動音声のアナウンス内容や処理の流れを自分たちで簡単に変更・更新できます。

サービス
NTT CPaaS NTT CPaaS

▶ NTT CPaaS「Voice API」- 音声通話・IVR対応の多機能音声API

NTT CPaaS「Voice API」は、通話(発着信)に加え、録音や音声認識、IVRなど幅広いVoice API機能を提供。国内最大級の通信品質と開発者向けの充実したドキュメントで簡単実装。

まとめ

Voice APIは「既製品のIVRツール」ではなく、音声機能を自社システムに組み込むための部品です。CRMとの連携・複数システムをまたぐフロー・独自の振り分けロジックが必要な場合に力を発揮します。

一方で、エンジニアの実装が前提です。「まず動かしてみたい」「開発部門を通さずに使いたい」という場合は、SaaS型のIVRツールから始めるほうが現実的なケースもあります。

サービスを選ぶときは、機能の充実度より「国内キャリア直収接続か」「Webhookのイベント粒度が十分か」「サンドボックスで検証できるか」を先に確認することをおすすめします。

よくある質問

Q1.

Voice APIとCTIの違いは何ですか?

A.

CTI(Computer Telephony Integration)は電話とコンピューターを統合する概念・システムです。Voice APIはその機能をAPIとして提供するもので、CTIシステムを構築する「部品」として使います。既存のCTIシステムにVoice APIを組み合わせて拡張するケースも多いです。

Q2.

導入にはプログラミング知識が必要ですか?

A.

API呼び出しのコードを書く必要があるため、基本的にはエンジニアが必要です。SDKやサンプルコードが充実しているサービスであれば、実装工数を抑えられます。ノーコードツールとの組み合わせで、業務部門が運用変更を行える設計にすることも可能です。

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監修者 鈴木 伸吾(監修)
この記事の監修 鈴木 伸吾(監修)
NTTドコモビジネスX株式会社
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

目次
  1. まず確認:API型とSaaS型、どちらが自社に合うか
  2. Voice APIの主要10機能——何ができるか
  3. 導入後の効果
  4. サービスを選ぶときに確認すべきこと
  5. NTT CPaaS「Voice API」について
  6. まとめ
  7. よくある質問

2026.06.16