あふれ呼を減らす方法|原因の特定・対策の優先順位・サービス選定基準
「電話がつながらない」状態が続くと機会損失が数字で積み上がります。機会損失の計算・原因の特定・IVR/ボイスボット/FAQ強化の優先順位・サービス選定の3つの確認ポイントを実務目線で整理しています。
鈴木 伸吾(監修)
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長
2026/06/16
「電話がつながらない」状態が続くと、顧客はいずれ電話をかけることをあきらめます。その瞬間から顧客満足度は低下し、機会損失が静かに積み上がります。特に予約受付や電話による購入受付など、電話対応が直接売上につながる場合には、その機会損失は顕著になります。
あふれ呼への対処方法は「人を増やす」「回線を増やす」だけではありません。IVRで即日受け止め→ボイスボットで自動化→FAQ整備で件数を減らすという段階的な仕組みで、オペレーターを増員せずに解決できるケースがほとんどです。
この記事では、自社の状況を数値で把握するところから、原因の特定・対策の優先順位・サービス選定の3つの確認ポイントまでを順番に整理しています。
この記事はこんな方へ
- あふれ呼・放棄呼の件数は把握しているが、何から手をつければいいか分からない
- IVR・ボイスボット・FAQ強化の優先順位を判断したい
- サービス選定時に見落とされやすい確認ポイントを把握したい
まず自社の状況を数値で把握する
対策に着手する前に、現状を把握してください。
具体的にはあふれ呼が発生している時期や時間、問い合わせ内容、問い合わせ後の対応など、感覚ではなく数字に基づいて分析することで、社内の優先度判断が変わります。現場の意見も確認しながら現状を把握していきましょう。
自社のあふれ呼はどれが原因か
原因によって最初に打つ対策が変わります。当てはまる状況を確認してください。
| 発生状況 | 主な原因 | 最初に打つべき対策 |
|---|---|---|
| キャンペーン直後・休日明けに集中してつながらない | 特定タイミングへの入電集中 | IVRであふれ呼を即日自動受付。折り返し予約に誘導 |
| 特定の時間帯にいつもつながらない | 人員配置・稼働計画が実態に合っていない | 入電データから需要予測を立てシフトを修正。IVRと並行 |
| 同じ内容の問い合わせが繰り返し来る | Webサイトで自己解決できていない | FAQ整備・チャットボットで入電数そのものを減らす |
| 電話以外の窓口がなくすべてが電話に集中している | 問い合わせ手段が電話だけ | SMS・チャット・メール等のチャネル追加+IVRでWeb誘導 |
鈴木 伸吾 (監修)
見落とされやすい原因として、PBX(電話交換機)やゲートウェイの「同時セッション数」の上限設定があります。キャンペーン時にオペレーターが空いていても、物理的な回線制限で溢れることがあります。ピーク時の最大呼量を理論値の1.2倍程度で見積もるインフラ側のキャパシティ設計が必要です。
対策の優先順位——何から始めるか
すべてを同時にやろうとすると何も定着しません。即効性のある手段から段階的に進めるのが現実的です。
| フェーズ | 手段 | 効果が出るまで | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 緊急対応 | IVR(自動音声応答)で自動受付 | 即日〜2週間 | 今すぐつながらない状況を止めたい |
| 中期対応 | ボイスボットで定型問い合わせを自動化 | 1〜3ヶ月 | IVRで凌いだ後、根本的な自動化率を高めたい |
| 継続改善 | FAQ強化・チャットボットで入電数を減らす | 3ヶ月〜 | 電話件数そのものを構造的に削減したい |
緊急対応:IVRでまずあふれ呼を受け止める
全オペレーターが通話中の状態を検知した瞬間、自動でIVRに切り替えて顧客を受け付ける仕組みです。待機状態のまま放置せず、次のアクションへつなぎます。既存の電話システムに組み込む形で導入できるため、比較的短期間で運用開始できます。
関連記事:IVR(自動音声応答)とは|仕組み・種類・導入判断の基準
| IVRでできる対応 | 音声案内の例 |
|---|---|
| 自動アナウンス | ただいま混み合っております。しばらくお待ちください |
| 折り返し予約(コールバック) | 折り返しご連絡を希望の方は1番を押してください |
| Webへの誘導(SMS自動送信) | ご用件によってはWebサイトで解決できます。URLをSMSでお送りします |
鈴木 伸吾 (監修)
IVRからURLをSMSで送信して誘導する「ビジュアルIVR」は、音声ガイダンスのみと比較して、Webへの移行率が高くなるケースが多いです。ただし、特定の定型処理に特化した設計と、有人対応への戻り導線の確保が成功の鍵となります。Webサイトへの一方的な誘導は顧客の不満を招くため、注意が必要です。
中期対応:ボイスボットで定型問い合わせを自動化する
ボイスボットはAI音声認識で顧客の発話を理解して自動応答します。従来のIVRがプッシュボタン式だったのに対し、「予約を確認したい」という自然な発話で処理が進みます。
向いているのは「注文状況の確認」「予約の変更・キャンセル」「よくある質問への回答」「手続き方法の案内」など、回答がパターン化できる問い合わせです。これらを自動化できると、オペレーターは感情的なケアが必要な複雑案件だけに集中できます。
継続改善:FAQ・チャットボットで電話件数そのものを減らす
「WebサイトでFAQが見つからないから電話するしかない」という顧客の行動パターンを変えることで、入電数を構造的に減らせます。
FAQ整備の手順はシンプルです。直近3ヶ月の問い合わせをカテゴリ分類し、頻度上位20〜30件を「Webで回答可能」と「電話必須」に仕分けして、前者をFAQとして公開・整備します。公開後の変化をモニタリングしながら毎月更新することで入電数が下がっていきます。日本コンタクトセンター協会の2025年実態調査でもチャットボットの活用増加が確認されており、中長期的な効果が期待できる施策として位置づけられています。
サービスを選ぶときの3つの確認ポイント
① 現場担当者が自分で設定・変更できるか
IVRのメニュー構成や案内文言を変更するたびに外部委託が必要な設計では、繁忙期やキャンペーン時の即応性が下がります。ノーコードで担当者が直接変更できるかどうかが、長期的な運用コストを左右します。リアルタイムでのKPIモニタリング(入電数・あふれ呼数・放棄率)と過去データの分析・レポート出力も確認してください。まず無料トライアルやデモ環境で実際に触れて確認することをおすすめします。
② IVR・SMS・Webをひとつで管理できるか
「あふれ呼→IVRで受け付け→SMSでURLを送信→Webで自己解決」という一連のフローを複数のシステムにまたがって管理すると、設定の複雑さと運用コストが増大します。電話とWebをシームレスに連携させる機能をひとつのプラットフォームで持っているかを確認してください。
③ 既存システムとAPIで柔軟に連携できるか
既存のCRM・コールセンターシステムと連携できないサービスを選ぶと、二重入力・データの分断・手作業の増加が発生します。
鈴木 伸吾 (監修)
API連携の柔軟性を最優先に確認してください。独自ロジックを組めないクローズドな環境では、将来的な業務変更に耐えられません。外部スクリプト一つでルーティングを動的に変更できる「プログラマブル」な基盤選定が、運用フェーズのメンテナンスコストを左右します。
まとめ——あふれ呼対策の進め方
あふれ呼対策は「現状を数値で把握→原因を特定→緊急度順に着手」という順番が重要です。
- 今すぐつながらない状況を止めたい:IVRで即日あふれ呼を自動受付。折り返し予約・SMS誘導をセットで設計する
- 定型問い合わせの自動化率を高めたい:ボイスボットで1〜3ヶ月かけて対応。IVRで状況を安定させてから導入する
- 電話件数そのものを構造的に減らしたい:FAQ整備・チャットボットで3ヶ月以上かけて入電数を削減する
サービス選定では「現場担当者が自分で変更できるか」「IVR・SMS・Webをひとつで管理できるか」「CRMとのAPI連携が柔軟か」の3点を最初に確認してください。
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よくある質問
あふれ呼と放棄呼の違いは何ですか?
あふれ呼は「待機キューに入った入電」全体を指し、放棄呼は「待機中に顧客側が切断した入電」です。あふれ呼が増えるほど放棄呼も増える関係にあります。KPI管理では両方の数値をセットで把握することが実態の正確な把握につながります。なお、着信直後(5秒以内)の切断を放棄呼に含めるか否かで応答率の数値が大きく変動するため、システム構築の段階でKPIの定義を統一しておくことが重要です。
IVRとボイスボットはどちらを先に導入すべきですか?
あふれ呼を今すぐ止めたいならIVRが先です。即日〜2週間での運用開始が可能で、折り返し予約・SMS誘導との組み合わせでまず状況を安定させます。IVRで状況を安定させた後、定型問い合わせの自動化率をさらに高めたいタイミングでボイスボットを検討するのが現実的な順番です。
放棄呼が予想より多い場合の原因は?
一度つながらなかった顧客が短時間に何度もかけ直す「ゴースト呼」が発生している可能性があります。また、PBXやゲートウェイの同時セッション数の上限設定が原因で、オペレーターが空いていても物理的に溢れているケースもあります。まずログを確認して、ゴースト呼と回線制限のどちらが原因かを特定してください。
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コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長
「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。
「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。
2026.06.16
鈴木 伸吾 (監修)
「ゴースト呼」に注意してください。一度つながらなかった顧客が短時間に何度もかけ直すことで、実質的な呼量が30〜40%増加します。放棄呼数が予想より多い場合はこの現象が発生している可能性があります。ゴースト呼によるリソース浪費がインフラ維持コストと顧客満足度の両方に影響する要因になります。