営業時間外の電話対応|IVR・転送・代行・留守電の使い分けと選び方

「個人携帯への全件転送」「留守電任せ」の2パターンを整理します。月間着信数・業種・緊急度で変わる4手段の比較・IVRの設定フロー例・選定時の確認ポイントを実務目線でまとめています。

鈴木 伸吾(監修)

鈴木 伸吾(監修)

コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

時間外の電話を完全に無視している企業は実際にはほとんどありません。「誰かが個人の携帯で受けている」か「留守電に任せきりになっている」か——どちらも何かしらの課題を抱えています。

個人携帯への全件転送は担当者の疲弊と退職リスクに直結します。留守電だけでは予約の取りこぼしが続きます。この記事では、月間着信数と緊急度の2点から最適な手段を絞り込む判断基準と、IVRの設定フロー例・選定時の確認ポイントを整理しています。

この記事はこんな方へ

  • 個人携帯への全件転送をやめたいが、代替手段が分からない
  • IVR・転送・代行・留守電の使い分けを判断したい
  • IVR導入のタイミングと選定の確認ポイントを把握したい

まず自社の状況を確認する

「月間着信数」と「緊急対応の有無」の2点を確認するだけで、選択肢はかなり絞れます。

確認項目 状況 おすすめの方向性
月間着信数(時間外) 月30件以下 留守電+折り返しルールで対応可
月30〜100件 メール・SMS誘導を組み合わせたIVRを検討
月100件以上 IVR+自動送信でほぼ無人化できる規模
緊急対応の有無 設備・医療系など緊急あり 転送を残す。IVRで振り分けて緊急のみ転送
問い合わせ・予約が中心 IVRで自己解決に誘導。有人転送は不要なケースが多い
現在の運用 担当者の個人携帯に全件転送中 最優先でIVRか留守電に切り替え。担当者の疲弊と退職リスクを止める

4つの手段——特徴と向いている場面

手段は「どれか1つ」ではなく、組み合わせて使うのが基本です。最も多いパターンは「IVR(一次対応)+緊急時のみ転送」です。

手段 コスト感 向いている場面 注意点
留守電 ほぼ無料〜数千円/月 着信30件以下・予算を抑えたい メッセージを誰がいつ確認するかのルールが必要
電話転送 通話料のみ(数百〜数千円/月) 緊急対応が必須・担当者が対応しなければ解決しない業種 担当者への集中を防ぐローテーション設計が前提
電話代行 月1〜5万円程度 有人対応の安心感が必要・社内リソース不足 一次受付のみで専門回答は不可。折り返し設計が必要
IVR 月1〜数万円程度 着信30件以上・自動化でコストを抑えたい 3階層以上の設計は離脱率が上がる。シンプルに設計する

関連記事:IVR(自動音声応答)とは|仕組み・種類・導入判断の基準

IVR——設定例と業種別の活用パターン

IVR(自動音声応答)は「1を押してください」のように、電話を自動で振り分けるシステムです。一度設定すれば24時間365日動き続けるため、時間外対応のコスト構造を根本から変えられます。

設定フロー例(飲食店・予約変更)

IVRフロー(飲食店の場合)

  1. 電話着信
  2. IVRが時間外アナウンスを流す
  3. 「予約変更は1を、緊急のご用件は2を押してください」と案内
  4. 1を押した顧客 → 予約サイトのURLをSMSで自動送付
  5. 2を押した顧客 → 当直担当者のスマートフォンに転送
  6. 何も押さない → 翌営業日の折り返し受付(録音)

このフローにより、緊急以外の電話はSMSで自己解決を促せます。翌朝の折り返しが集中する問題も緩和されます。SMSとの組み合わせが特に有効で、URLを音声で聞き取らせると入力ミスが起きますが、SMSで送ればワンタップで顧客が自己解決できます。

導入事例:IVR・SMS活用でオペレーターへのコール数が約25%削減

業種別の活用パターン

業種 IVRの活用パターン
クリニック 夜間の問い合わせに翌朝の予約枠・救急窓口を自動案内。緊急は当直に転送
飲食店 閉店後の予約変更に予約サイトのURLをSMSで自動送付
不動産 内見希望の連絡を担当者へ転送。問い合わせ内容は録音で記録
ITシステム・インフラ 障害報告を自動で一次受付。緊急フラグがある場合のみオンコールに転送
EC・通販 配送変更の手続きをマイページで行うよう案内。URLをSMSで送付
鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

IVR設計で最も見落とされるのが「階層の深さ」です。3階層を超えると操作が複雑になり、途中で離脱されるリスクが高まります。ボイスメールへ直接つながるルートを必ず1つ確保しておくことが、離脱させない設計の基本です。スマートフォンへの転送時は通信環境による遅延が発生するケースがあります。安定した通信が確保できる構成かどうかを事前に確認してください。

電話転送——緊急電話に絞り込む運用が基本

設備投資なしで今すぐ始められる手段です。少人数のクリニック・不動産・工務店など、担当者が対応しなければ解決しない問い合わせが多い業種に向いています。

ただし、すべての時間外電話を転送すると担当者の負担が集中します。IVRで一次振り分けを行い、緊急要件のみ転送する構成が現実的です。ローテーションルールを設けて特定の担当者への集中を防ぐことが、長期運用の前提条件です。

月間の転送件数×通話料のコストは事前に試算してください。緊急対応が月に数件程度なら費用は抑えられますが、件数が増えると想定外のコストになるケースがあります。

電話代行——有人対応の安心感が必要な場合

高齢者や法人など、オペレーターによる直接対応を重視する顧客が多い場合に有効です。社内リソースが不足していて外部委託で補いたい場合にも使われます。

代行オペレーターの業務は一次受付(用件の聞き取りと記録・折り返し先の確認)に限定されており、専門的な回答や詳細案内には対応していないサービスがほとんどです。「受けてもらって、翌営業日に自社で対応する」という運用フローで使うのが基本です。

費用は月1〜5万円程度が相場です。件数が増えると従量課金になるサービスも多いため、月間着信数を確認したうえで選定してください。

留守電——コスト最小で始める最初のステップ

月間着信数が少ない段階では、留守電と折り返しルールの組み合わせがコスト効率のよい選択肢です。ルールを決めておくだけで対応品質が安定します。

折り返しルールの例

  • 翌営業日の始業30分以内に必ずメッセージを確認する
  • 「至急」「トラブル」などのワードを含む場合は優先対応
  • 折り返し期限はメッセージ受信から原則4時間以内
  • 担当者不在時の代理対応者をあらかじめ決めておく

月間着信数が増えてきた・通知漏れが増えてきたというタイミングでIVRへの移行を検討するのが無理のない段階的なアプローチです。

IVRシステムを選ぶときの確認ポイント

図:IVRシステムを選ぶときの確認ポイント

IVRの選定で最も見落とされるのは「管理画面の使いやすさ」と「API連携の柔軟性」です。どちらも導入後の運用コストに直結します。

確認ポイント なぜ重要か
管理画面からノーコードで変更できるか 年末年始や祝日の時間帯変更・キャンペーン告知など、フローの変更は頻繁に起きる。都度エンジニア対応が必要なシステムは運用負荷が高い
CRM・予約システムとAPI連携できるか 繁忙期に案内内容を自動切り替えしたい・顧客データに基づいて振り分けたい場合は、CRMとのAPI連携が必要になる
SMS送信機能が組み込まれているか 「URLをSMSで送る」設計が使えるかどうかで自己解決率が大きく変わる。IVRとSMSが同一フロー内で完結するかを確認する
サポートが日本語で受けられるか 設定変更・トラブル対応を日本語でサポートしてもらえるかは、特に初期導入時の重要度が高い
鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

管理画面の使いやすさ以上に重要なのが「APIの柔軟性」です。繁忙期に案内内容を頻繁に変更する場合、手動対応では限界があります。API連携でCRMのデータに基づいて最適な案内へ自動振り分けできる設計かどうかを、初期選定の段階で確認してください。将来的なボイスボット・チャットボットの統合も見据えた拡張性も選定基準に入れることをお勧めします。

まとめ——手段選択のチェックリスト

時間外の電話対応は「どの手段を使うか」よりも「自社の規模と緊急度に合っているか」で判断するのが先です。

  • 月間30件以下:留守電と折り返しルールで十分なケースが多い
  • 月間30〜100件:SMS誘導を組み合わせたIVRを検討。SMSとのセット設計が自己解決率を上げる
  • 月間100件以上:IVR+自動送信でほぼ無人化できる規模。CRM連携で振り分けを自動化する
  • 緊急対応あり:IVRで一次振り分けし、緊急のみ転送。全件転送は担当者の疲弊と退職リスクにつながる

最も多い現場の失敗は「個人携帯への全件転送」を続けてしまうことです。担当者の疲弊を止めるために、まず一次受付を自動化することを優先してください。

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よくある質問

Q1.

留守電からIVRに切り替えるタイミングはいつですか?

A.

月間着信数が増えてきたタイミング、または通知漏れが繰り返し起きているタイミングが目安です。特定の担当者への負担集中や、折り返しが翌朝に集中する状況が続いている場合は移行を検討してください。

Q2.

IVRは小規模の事業者でも導入できますか?

A.

クラウド型のIVRは、スマートフォン1台から始められるサービスがあります。初期工事不要で月額数千円から利用できるケースも多く、少人数の店舗・クリニック・個人事業主にも導入事例があります。

Q3.

個人の携帯電話への転送はどうしても必要ですか?

A.

緊急対応が本当に必要な業種(医療・設備管理・インフラなど)であれば、一定数の転送は避けられません。ただし、IVRで一次振り分けを行い「緊急のみ転送」に絞ることで、担当者への着信数を大幅に減らすことができます。週次ローテーション制にすることで負担の集中も防げます。

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監修者 鈴木 伸吾(監修)
この記事の監修 鈴木 伸吾(監修)
NTTドコモビジネスX株式会社
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

目次
  1. まず自社の状況を確認する
  2. 4つの手段——特徴と向いている場面
  3. IVR——設定例と業種別の活用パターン
  4. 電話転送——緊急電話に絞り込む運用が基本
  5. 電話代行——有人対応の安心感が必要な場合
  6. 留守電——コスト最小で始める最初のステップ
  7. IVRシステムを選ぶときの確認ポイント
  8. まとめ——手段選択のチェックリスト
  9. よくある質問

2026.06.17