コンタクトセンターの課題6つと、KPIで現状を見える化する方法|段階的な改善の進め方

オペレーター不足・対応品質のばらつき・チャネル分散など、コンタクトセンターでよく起きる6つの課題を整理。KPIで現状を把握する方法と、スモールスタートでの改善の進め方を解説します。

鈴木 伸吾(監修)

鈴木 伸吾(監修)

コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

オペレーター不足・対応品質のばらつき・チャネル分散など、コンタクトセンターでよく起きる6つの課題を整理します。そして、KPIで現状を把握する方法と、スモールスタートでの改善の進め方を解説します。

コンタクトセンターの課題は、1つだけ直しても解決しないことがほとんどです。オペレーター不足を補おうと増員すれば人件費が膨らみ、品質を上げようとマニュアルを厚くすれば現場が読まなくなる、というようにそれぞれの課題同士が絡み合っているからです。

この記事では、現場でよく起きる6つの課題と改善の方向性、KPIでの現状把握の仕方、そして段階的に改善を進めるコツを整理しました。「全部直さなければ」と気負わず、まず何から手をつけるかが見えてくる内容です。

この記事はこんな方へ

  • 自社の課題が「人員不足」「対応品質のばらつき」など複数絡み合っていて、どこから手をつければいいか分からない
  • 感覚ではなくKPIで現状を把握し、優先順位を判断したい
  • 大規模なシステム刷新ではなく、スモールスタートで改善を進めたい

なぜ、課題が複雑に見えるのか

原因は3つの変化が同時に進んでいることにあります。問い合わせ件数の増加、人材確保の難しさ、そして電話以外のチャネルへの広がりです。

以前は注文確認や返品対応のような定型処理が中心でしたが、サービスが複雑になるほど契約・技術面の問い合わせが増えます。同時に採用は難しくなり、対応窓口は電話・メール・チャット・SNSへと分散しました。1つの現場で3つの変化が重なれば、当然対応は難しくなります。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

オムニチャネル化は単に窓口を増やすことではありません。チャネル間のデータを統合し、一貫した対応ができる仕組みを整えることが本質です。顧客が同じ内容を繰り返し説明しなければならない状況を防ぐことが、CX向上に直結します。

現場で起きやすい6つの課題

図:DXが求められる4つの背景

複数当てはまることが多いですが、まずは自社で特に強く感じている課題から見てみてください。

No. 課題 典型的な症状 効きやすい対策
1 オペレーター不足・離職 採用しても定着しない。ベテランが抜けると品質が落ちる FAQ・チャットボットで対応件数自体を減らす
2 繁閑差 キャンペーン直後や障害時にあふれ呼が発生。閑散期は人員が過剰 SMS誘導などで問い合わせを分散
3 対応品質のばらつき 担当者によって案内内容や説明のわかりやすさが違う トークスクリプト・履歴共有
4 オムニチャネル対応の遅れ チャネルを変えるたびに顧客が同じ説明を繰り返す 対応履歴の一元管理
5 在宅・ハイブリッド対応 出社前提のルールのまま。情報共有が遅れる 対応状況の可視化とルール統一
6 問い合わせ履歴の活用不足 履歴は蓄積されているが検索・分析されていない 履歴の可視化とデータ分析

6つのうち、最初に着手しやすいのは「オペレーター不足」と「繁閑差」への対応です。FAQ整備やSMSでの問い合わせ分散は、システムの大幅な刷新を伴わずに始められ、効果も比較的早く見えます。対応品質のばらつきや在宅対応は、運用ルールの整備が前提になるため、少し時間がかかる位置づけです。

関連記事:コンタクトセンターの改善が進まない理由|4つの原因と進め方

1. オペレーター不足には「人を増やす」より「件数を減らす」

精神的な負荷の大きい仕事である以上、フォロー体制が薄いとベテランほど離職しやすくなります。採用・育成コストがかさみ、人が定着しないまま現場が疲弊する悪循環に陥りがちです。

対処の基本は、オペレーターが対応すべき問い合わせ自体を減らすことです。FAQ整備やチャットボットで定型的な問い合わせを自動化すれば、残った問い合わせに集中できます。負荷が特定の担当者に偏らない体制づくりも、定着率の改善に直結します。

2. 繁閑差は人員配置だけでなく「分散」で対応する

入電量は時間帯・曜日・キャンペーン・障害発生時で大きく変動します。繁忙時はあふれ呼や応答遅延が起き、閑散時は人員が過剰になって効率が落ちる——人員配置の見直しだけでは限界があります。

SMSなどのデジタルチャネルへ問い合わせを分散させる仕組みを組み合わせると、人手だけに頼らない運営が可能になります。

導入事例:SMSによるテキストサポートへの誘導で応答率の低下を回避。Webフォーム活用で製品交換時の対応時間を3割削減

3. 対応品質のばらつきは「個人の経験」に依存させない

担当者ごとの経験差で案内内容が変わると、顧客満足度の低下だけでなく再問い合わせやクレームも増えます。トークスクリプトや対応マニュアルの整備、問い合わせ履歴の共有によって、担当者の判断に依存しすぎない運用に近づけます。

4. オムニチャネル対応は「履歴の分断」をなくすことが本質

電話・メール・チャット・SMS・SNSと窓口が増えるほど、チャネルをまたぐたびに顧客が同じ説明を繰り返す状況が生まれやすくなります。顧客情報や対応履歴を一元的に確認できる環境を整え、どの問い合わせをどのチャネルで受けるかを整理することが基本です。

5. 在宅・ハイブリッド対応は「見える化」がカギ

出社を前提とした運用のままでは、在宅勤務時のコミュニケーション不足や情報共有の遅れが教育・品質管理の課題に直結します。対応状況を可視化し、在宅でも同じ基準で業務を進められるルールを整えることが欠かせません。

6. 問い合わせ履歴の活用不足は「分析できる形」で蓄積する

履歴が蓄積されていても、検索・分析できる形になっていなければ宝の持ち腐れです。過去の対応傾向をFAQやマニュアルの見直しに活かせる体制を整えることで、再現性のある改善につながります。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

現場で陥りやすいのが、ツールの多機能化によって操作が複雑になることです。対応品質のばらつきはオペレーターの習熟度だけでなく、UI設計のわかりにくさが原因の場合もあります。とくに在宅環境では通信の遅延や不安定さが対応品質に影響しやすいため、安定した操作環境を前提とした設計を軽視してはいけません。

課題をKPIで見える化する

図:課題をKPIで見える化する

感覚だけで「品質が低い気がする」と判断すると、対策も的外れになりがちです。以下の5つのKPIを定期的に見るだけで、優先すべき課題がかなり絞り込めます。

KPI 数値が悪いときに考えられる原因 目安
応答率 対応体制の不足、問い合わせの集中時間帯への偏り 90%前後が一般的な目標水準
平均処理時間(AHT) 案内フローの複雑さ、確認作業や後処理の多さ 業種・案件によって幅が大きい
一次解決率 その場で案内できる情報の不足、担当者間の連携不足 低いと再問い合わせが増えコストも膨らむ
顧客満足度 案内のわかりにくさ、解決までの時間、対応時の負担感 スコアだけでなく自由回答の傾向分析が重要
離職率・定着率 業務負荷の偏り、教育不足、フォロー体制の不備 現場の働きやすさを示す先行指標

5つの指標は単独で見るより、組み合わせて見ることで因果関係が見えてきます。応答率の低下は人員不足だけでなく問い合わせの偏りが原因かもしれませんし、AHTが短くても一次解決率が下がっていれば、結局は再入電が増えて現場の負担は変わりません。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

AHTの短縮だけを重視すると、一次解決率が下がり再入電の増加につながるおそれがあります。評価指標の設計では「処理時間」と「解決の質」のバランスを考慮する必要があります。離職率の低減には、応対ログの自動要約などの仕組みを導入し、実際の業務負担がどの程度軽減されたかを可視化することが効果的です。


関連記事:応答率が低い原因は4つだけ|診断と人員増加に頼らない改善策

改善を定着させる進め方

図:改善を定着させる進め方

課題と指標が見えても、進め方を間違えると改善が定着しません。押さえておきたいのは3点です。

① 課題のつながりを見てから手をつける

オペレーター不足は応答率の低下を招き、対応の遅れは顧客満足度の低下や再問い合わせを招きます。1つの課題に対処しても、つながった先の課題が解決しないままだと効果が見えにくくなります。着手前に、自社の課題同士がどう連動しているかを一度整理しておくと無駄が減ります。

関連記事:コンタクトセンターを効率化するには?課題別の手段と進め方

② 現場の運用に合わせて設計する

入力項目が多すぎる、既存のフローと合わない——こうした仕組みは導入しても現場で使われずに形骸化します。実際の業務フローや担当者の動きを踏まえて設計し、現場の声を取り入れることが定着の前提になります。

③ 小さく始めて、効果を見ながら広げる

一度に複数の仕組みを入れると、定着する前に運用が複雑になります。問い合わせが集中しやすい業務や、定型対応が多い領域など、効果を検証しやすい範囲からスタートするのが安全です。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

大規模なシステムを一度に刷新するのではなく、API連携を活用したスモールスタートを推奨します。SMS通知の自動化など特定の機能に絞って導入すれば、工数を抑えながら短期間で効果検証が可能です。現場の運用フローを考慮せずに全体最適を目指すと、実際の業務に定着せず形だけの仕組みになりがちです。

まとめ

コンタクトセンターの課題は複数が絡み合っているため、1つだけ直そうとすると効果が見えにくくなります。

  • まずは自社の課題が6つのうちどれに近いかを確認する
  • オペレーター不足・繁閑差は、FAQ整備やIVR・SMS導入など着手しやすい施策から始められる
  • 応答率・AHT・一次解決率などのKPIを組み合わせて見ることで、感覚ではなく数値で優先順位をつけられる
  • 一度に全部は変えず、効果を検証しやすい範囲からスモールスタートする

課題を整理し、KPIで現状を確認できれば、次にどこへ手を入れるべきかは自然と見えてきます。

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監修者 鈴木 伸吾(監修)
この記事の監修 鈴木 伸吾(監修)
NTTドコモビジネスX株式会社
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

目次
  1. なぜ、課題が複雑に見えるのか
  2. 現場で起きやすい6つの課題
  3. 課題をKPIで見える化する
  4. 改善を定着させる進め方
  5. まとめ

2026.07.03