コンタクトセンターの改善が進まない理由|4つの原因と進め方

「ツールを導入したのに改善した実感がない」という停滞の原因を整理し、よくある5つの課題、成果につながる改善の進め方までを解説します。

鈴木 伸吾(監修)

鈴木 伸吾(監修)

コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「ツールを導入したのに改善した実感がない」「課題はわかっているのに何から手をつければいいかわからない」——コンタクトセンターの改善担当者なら、一度はこの感覚を覚えたことがあるはずです。

多くの場合、原因はツール選定の前段——目的設定や運用ルールの整備が抜けていることにあります。

この記事では、改善が進まない4つの原因、よくある5つの課題と改善策、そして成果につながる進め方を整理しました。

この記事はこんな方へ

  • ツールを導入したのに改善の実感がなく、何が足りないのか分からない
  • 対応品質のばらつき・再問い合わせ・有人対応への集中など、複数の課題が絡み合っている
  • 場当たり的な対応ではなく、優先順位をつけて改善を進めたい

「改善」とは効率化ではなく、安定化のこと

コンタクトセンターの理想は、対応品質を維持しながら運営を安定させる仕組み化がなされている状態です。件数の削減や処理時間の短縮などの改善は、そのための一部分にすぎません。

たとえば処理速度の短縮だけを優先すると、品質が落ちて再問い合わせが増える——という逆効果が起こります。FAQ整備やツール導入、自動化はいずれも、安定運営を支える手段として位置づける必要があります。

そのために最初にやるべきは、「何秒でオペレーターにつながるべきか」というサービスレベル(SL)を定義することです。SLが曖昧なままでは、施策の効果も判断基準もぶれてしまいます。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

改善の罠は「ツール導入」自体が目的化することです。システムを入れただけで呼損率が20%改善すると期待されがちですが、導線設計が不十分だと逆に離脱が増えることも。技術選定の前に、まずは現状の着信フローからSLを再定義すべきです。

改善が急がれる背景

図:改善が急がれる背景

問い合わせの増加や顧客対応の複雑化により、従来の運営方法だけでは安定した対応を維持しにくくなっています。

複雑な問い合わせが増えている

商品・サービスの多様化により、個別対応が必要な問い合わせが増えています。1件あたりの対応負荷が上がるほど、オペレーターの業務負担は増大し、応答遅延や対応品質のばらつきが生じやすくなります。

場当たり的な運営が、品質のばらつきを生んでいる

想定外の対応が続くと、現場ではその場でルールを追加したり人手で補完したりする場面が増えます。根本原因を整理しないままでは、対応方法や判断基準が担当者ごとに分かれ、引き継ぎの困難さや特定の担当者への業務集中を招きます。

顧客は「解決の速さ・わかりやすさ」を当然と感じている

待ち時間の短さや状況に応じた適切な案内など、顧客体験の質そのものが評価対象になっています。電話だけに依存した運営では、こうした水準を満たすことが難しくなってきています。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

マルチチャネル化により1件あたりの平均処理時間(AHT)は増加傾向にあります。実は、単純な回答ほど自動化され、有人対応には難易度の高い案件が集中しているのが実情です。現場の負担増を根性論で解決しようとせず、ボット等による一次受けで呼量を削減する設計を前提に組む必要があります。

改善が進まない4つの原因

図:改善が進まない4つの原因

改善の必要性を認識していても、運営の進め方や体制そのものに根本的な原因がある場合があります。

① 改善の目的があいまいで、ゴールが定まらない

応答率の向上なのか、再問い合わせの削減なのか、対応品質の安定化なのか——これが整理されていなければ、現場が取るべき行動も優先順位も決まりません。運営全体として目指す状態を組織内で共有し、ゴールを定めることが改善の第一歩です。

② 決めたルールが現場に浸透せず、運用が統一されない

ルールや対応方針を策定しても、内容が曖昧だったり共有の機会が不足していたりすると、同じ基準で対応しているつもりでも解釈に差が出ます。対応フロー・判断基準を明確にし、教育・共有まで含めて運用できる体制が必要です。

③ 振り返りができず、同じ問題が再発する

施策を実施しても振り返りが不十分だと、何が効果的だったかを把握できません。日々の対応に追われていると振り返りの時間を確保しにくく、場当たり的な対応の積み重ねになりがちです。

④ 担当者任せの運営になり、対応が属人化する

ナレッジの整備が不十分なまま業務を進めると、現場では担当者の経験や判断に依存した対応が増えます。担当者が変わるたびに対応内容が変わる状態では、品質を安定させることが難しくなります。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

失敗の要因は、ログが構造化データになっていないことにあります。音声のみの管理では振り返りに工数がかかり、結局は担当者の記憶に頼る運営になりがちです。改善にはまず全通話の自動テキスト化を行い、特定のキーワード出現率を可視化することが不可欠です。データに基づかない施策は現場に拒絶されます。

よくある5つの改善課題

図:よくある5つの改善課題

課題を整理しないまま運営を続けると、同じ問題が繰り返されやすくなります。

No. 課題 主な原因 改善策
1 対応品質のばらつき 判断基準が不明確・担当者間のスキル差 トークスクリプト整備・対応フロー標準化
2 再問い合わせの繰り返し 案内の不完全・情報の伝達不足 初回解決率(FCR)向上を軸とした案内設計の見直し+SMS補完
3 有人対応への問い合わせ集中 振り分け設計の未整備・自己解決導線の欠如 IVR・SMS・FAQ活用で受け皿を分散
4 特定オペレーターへの負担偏り スキルの偏在・ナレッジの非共有 振り分けルール見直し・組織全体のスキル底上げ
5 繁忙期の運営不安定化 事前の体制・導線整備が不十分 繁閑パターンの把握と入電抑制施策の事前設計

5つのうち、「再問い合わせ」と「有人対応への集中」は運営コストへの影響が大きく、多くの現場で最初に着手される課題です。再問い合わせが減ればオペレーターの稼働そのものが減り、有人対応の集中が緩めば他の4課題への負荷も軽くなるためです。

1.対応品質のばらつきは「スキル差」ではなく「仕組みの欠如」が原因

担当者によって案内内容や対応速度、説明のわかりやすさに差が出ると、顧客満足度の低下や不信感につながります。対応フローや案内基準を整理し、チェックリストやトークスクリプトを使えば、経験の浅いオペレーターでも品質を担保しやすくなります。

2.再問い合わせはFCR(初回解決率)を指標にして削減する

1回の対応で疑問を解消しきれないと、同じ顧客から再度連絡が入り、現場の負担が増えます。問い合わせの背景やつまずきやすいポイントを分析し、1回で解決できる案内内容に見直すことが有効です。対応後にSMSでフォローアップ情報を送るなど、補完的な連絡手段の組み合わせも効果的です。

導入事例:製品の購入を検討する顧客をSMSでフォロー販売店へのご案内など、確実で効率的な連絡対応を実現!

3.有人対応への集中はチャネル設計の問題

定型的な問い合わせまで有人で受けている状態は設計上の課題です。IVR・SMS・FAQを組み合わせた問い合わせ導線を整備すれば、オペレーターは本来人が対応すべき複雑な案件に集中できます。

関連記事:IVR(自動音声応答)とは|仕組み・種類・導入判断の基準

導入事例:「お客様サービス向上」「問い合わせ電話の削減」「セールスのフォロー」など、空電プッシュを多角的に活用してコールセンターの課題を解決

4.特定オペレーターへの偏重は「スキルの可視化」から解消する

負担の偏りは、スキルが可視化されていないことが一因です。対応履歴や得意分野を整理してスキルマップ化し、誰でも対応できる業務を増やすことが、組織全体のスキル底上げにつながります。

5.繁忙期の不安定化は事前設計で防げる

繁忙期の混乱は「起きてから対処する」より「起きる前に設計する」方が大幅に抑制できます。過去の繁忙パターンを分析し、よくある問い合わせをSMSやFAQで事前案内することで、入電量そのものを抑制できます。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

再問い合わせ(リピートコール)が増えると運営コストは急騰します。有人対応を減らすこと以上に、FCR(初回解決率)を上げる方が全体のCX向上に寄与する場合が多いです。システムによる情報同期が鍵になります。

改善を進める5つのステップ

図:改善を進める5つのステップ

個別の課題にその都度対応するだけでは、十分な効果を得にくいことがあります。原因や優先順位を見極めながら段階的に進めることが重要です。

① データで現状を把握する

まず現在の運営状況を整理し、コンタクトセンター全体の実態を把握します。問い合わせ件数・カテゴリ別内訳、応答率・平均応答時間、AHT(平均処理時間)、FCR・再問い合わせ率、オペレーター別・時間帯別の負荷分布——これらを確認することで、課題の所在が明確になります。

現状を十分に把握しないまま着手すると、優先すべき課題を見誤ります。効果の低い施策に工数をかけないためにも、現場全体の視点で問題を捉えることが先決です。

② 根本原因を特定し、優先順位を決める

再問い合わせが多い場合でも、原因が「案内内容の不足」なのか「FAQ未整備」なのか「情報共有の欠如」なのかで、取るべき施策はまったく変わります。複数の課題がある場合は「顧客への影響度×現場への緊急度」で優先順位を決めてください。

③ ゴールから逆算して施策を選ぶ

「再問い合わせを月次15%削減する」というゴールから逆算すれば、「案内内容の見直し→FAQの整備→SMS補完導入」という施策が見えてきます。あふれ呼や有人対応への集中が課題になっている場合は、IVR(自動音声応答)・SMS・Webを組み合わせた導線設計も選択肢の1つです。

関連記事:IVR×SMS連携で電話対応を自動化する方法|仕組み・他チャネルとの違い・導入判断・サービスの選び方

サービス
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▶ あふれ呼対策|IVRによる入電の一次応答・自動化

あふれ呼や時間外呼を受けた際、SMSを自動送信して、顧客をFAQやセルフサービス対応ページに誘導。NTT CPaaS Moments を活用すれば、顧客対応に掛かるオペレーターの稼働を削減したり、営業時間外にも24時間問合せを受付できます。

④ 施策を「運用ルール」として現場に落とし込む

改善策を決めても、現場で実行できる形に落とし込めなければ運用は定着しません。対応フローや判断基準、役割分担を整理し、誰が対応しても同じ基準で動ける状態を整えます。担当者ごとの解釈に差が出たままでは、改善前と同じ課題が繰り返されるリスクが残ります。

⑤ 定期的な振り返りで改善サイクルを回す

改善施策は実施して終わりではありません。問い合わせ件数や再問い合わせの発生状況、対応時間、現場負担の変化を定期的にモニタリングし、施策が実際に機能しているかを確認します。運営環境や問い合わせ内容は変化し続けるため、導入時に有効だった施策も実態に合わなくなることがあります。継続的な見直しが改善の精度を高めます。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

改善を「点」で終わらせないためには、KPIの自動取得環境を構築してください。手動集計では週に数時間のロスが発生し、分析が形骸化します。まずは、IVR到達率や各階層での離脱率を1分単位で追えるダッシュボードを用意すること。モールスタートで1ヶ月単位の改善サイクルを回し、有効な施策のみをルール化するのが定石です。

まとめ

コンタクトセンターの改善が進まないとき、多くはツール選定より前の「目的設定」と「運用ルールの整備」が抜けています。

  • 効率化ではなく安定化を目指し、最初にSL(サービスレベル)を定義する
  • 改善が進まない原因は、ゴールの曖昧さ・ルール浸透不足・振り返り不足・属人化の4つ
  • 5課題のうち「再問い合わせ」と「有人対応集中」は影響が大きく、着手しやすい
  • 現状把握→原因分析→施策選定→運用ルール化→振り返りの5ステップで進める

一度に全部を変える必要はありません。データで現状を把握し、影響度の大きい課題から手をつければ、改善の実感は着実に積み上がっていきます。

SMS・IVRを使った導線改善は、Momentsで一元化できる

「再問い合わせ」や「有人対応への集中」といった優先度の高い課題に対し、NTT CPaaS「Moments」は広範なアプローチが可能です。「Moments」はSMS、メール、音声などの多様なコミュニケーションチャネルを統合し、ドラッグ&ドロップの直感的な操作でフローを構築できるノーコードツールです。

あふれ呼発生時のSMS自動送信によるFAQへの誘導、対応後のフォローアップ配信で再問い合わせを未然に防ぐ、IVRと組み合わせて有人対応への問い合わせ集中を緩和——0120・050などの国内番号に対応し、設定代行を含む日本語サポートで導入初日から運用できます。まずはあふれ呼や再問い合わせが多い窓口から、スモールスタートで試すのが現実的です。

サービス
NTT CPaaS NTT CPaaS

▶ Moments(コミュニケーション・フロービルダー)- ノーコードで始める業務連絡の自動化

「Moments」は、IVR(音声自動応答)を含む各種メッセージングサービス(SMS・Voice・メールなど)を高度に融合させ、顧客との双方向コミュニケーションを自動化するプラットフォームです。ドラッグ&ドロップの直感操作で、担当者が直接フローを構築・修正。開発のリードタイムゼロで、現場主導のスピード感ある運用が可能です。

よくある質問

Q1.

ツールを導入したのに改善が進まない理由は何ですか?

A.

多くの場合、ツール選定より前の「ゴール設定」と「運用ルールの設計」が不十分なことが原因です。何のためにそのツールを使うのかを明確にし、現場の業務フローに合わせた運用設計まで行わないと定着しません。

Q2.

FCR(初回解決率)の目標値はどの程度が適切ですか?

A.

業種によって異なりますが、一般的に70〜80%が改善目標の目安とされることが多いです。自社の現状値を計測し、再問い合わせ率の削減と合わせて目標設定することを推奨します。

Q3.

対応品質のばらつきを短期間で解消する方法はありますか?

A.

最も即効性が高いのはトークスクリプトと対応フローチャートの整備です。「どの状況でどう判断するか」を明文化することで、経験の浅いオペレーターでも一定水準の対応が可能になります。

Q4.

コンタクトセンターの改善でよくある失敗事例は?

A.

最多の失敗は「ツール導入が目的化すること」です。次いで「振り返りの仕組みがなく同じ問題が繰り返される」「全体最適を目指して一斉導入し現場が混乱する」の3パターンが代表的です。

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監修者 鈴木 伸吾(監修)
この記事の監修 鈴木 伸吾(監修)
NTTドコモビジネスX株式会社
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

目次
  1. 「改善」とは効率化ではなく、安定化のこと
  2. 改善が急がれる背景
  3. 改善が進まない4つの原因
  4. よくある5つの改善課題
  5. 改善を進める5つのステップ
  6. まとめ
  7. よくある質問

2026.06.29