コンタクトセンターの自動化|手段の選び方と進める順番

IVR・チャットボット・SMS誘導・生成AIなど、コンタクトセンター自動化の主な手段と、自社の課題に合った選び方・進め方を解説します。全自動化ではなく有人対応と組み合わせる設計のポイントも整理しています。

鈴木 伸吾(監修)

鈴木 伸吾(監修)

コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

コンタクトセンターの自動化は、「人手を減らす」ための取り組みではありません。問い合わせの増加・人手不足・定型作業の多さを解消し、オペレーターが本当に対応すべき業務に集中できる環境を整えることが目的です。

対応チャネルが増えるほど、情報の転記や履歴確認、定型的な問い合わせ対応に工数が割かれ、複雑な顧客対応にリソースを回せなくなりがちです。

この記事では、自動化で解決しやすい課題、IVR・チャットボット・生成AIなど主な手段の使い分け、そして失敗を防ぐ進め方の順番を整理しました。

この記事はこんな方へ

  • IVR・チャットボット・生成AIなど手段が多くどれから手をつけていいか分からない
  • 全自動化ではなく、有人対応と組み合わせた現実的な設計をしたい
  • 段階的な進め方と、失敗を避けるための注意点を整理したい

自動化とは「定型業務を仕組み化し、人を判断業務に回す」こと

自動化の対象になるのは、FAQ・チャットボットによる自己解決、IVRによる振り分け、音声認識によるテキスト化、対応履歴の自動記録といった定型業務・一次対応・後処理です。すべてを無人化するのではなく、オペレーターが個別性の高い対応や判断が必要な業務に集中できる環境を整えることが狙いです。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

自動化は単なるコスト削減ではなく、顧客接点をデジタルデータとして蓄積・活用する取り組みとして捉えることが重要です。自動化を過度に進めすぎると顧客満足度が低下しやすくなるため、すべてを無人化する設計が最適とは限りません。実務では、一定割合で有人対応へ切り替えられる運用にしておくことで、運用の安定性と顧客体験を両立しやすくなります。

自動化で解決しやすい6つの課題

図:自動化で解決しやすい6つの課題

まず自社のコンタクトセンターが、6つのうちどれに近いかを確認してみてください。

課題 自動化で改善しやすいこと
あふれ呼・応答率の低下 SMS誘導やIVRで電話への集中を分散し、入電数を減らす
オペレーター不足による現場負荷 一次受付・定型問い合わせ・履歴記録を仕組み化して個人負担を減らす
後処理・入力作業の多さ 音声認識によるテキスト化・生成AIによる要約自動作成で手間を削減
対応品質のばらつき スクリプト自動表示・回答候補の提示で担当者差を抑える
時間外・休日の問い合わせ対応 FAQ・チャットボット・IVRで有人対応なしに一次案内を実現
問い合わせ傾向の把握 通話テキストデータや履歴の蓄積・分析でFAQ改善や導線見直しに活用

6つのうち、「あふれ呼・応答率の低下」と「オペレーター不足」は影響が大きく、多くの現場で最初に着手される課題です。入電そのものを減らせれば、後処理や対応品質のばらつきといった他の課題への負荷も同時に軽くなります。

あふれ呼・応答率の低下はSMS誘導が即効性が高い

FAQやチャットボットで自己解決を促し、IVRで問い合わせ内容に応じて振り分ければ、電話への集中を分散できます。混雑時にSMSでWeb手続きや案内ページへ誘導すれば、入電数自体を抑えられ、応答率の改善と再入電の抑制が同時に進みます。

関連記事:あふれ呼を減らす方法|原因の特定・対策の優先順位・サービス選定基準

サービス
NTT CPaaS NTT CPaaS

▶ あふれ呼対策|IVRによる入電の一次応答・自動化

あふれ呼や時間外呼を受けた際、SMSを自動送信して、顧客をFAQやセルフサービス対応ページに誘導。NTT CPaaS Moments を活用すれば、顧客対応に掛かるオペレーターの稼働を削減したり、営業時間外にも24時間問合せを受付できます。

オペレーター不足は「定型業務の切り出し」で緩和する

一次受付や履歴記録を仕組み化するだけで、一人あたりの負担の偏りを抑えられます。限られた人員でも対応体制を維持しやすくなり、運用の安定化につながります。

後処理・入力作業は音声認識と生成AIで圧縮できる

通話後の要約作成や対応履歴の入力、複数システムへの転記は工数のかかりやすい業務です。音声認識による通話内容のテキスト化、生成AIによる要約の自動作成を組み合わせれば、入力の手間を大きく減らせます。

対応品質のばらつきは「標準化」で解消する

案内内容の違いや確認漏れは、対応フローや案内内容を標準化することで抑えられます。FAQやスクリプトの自動表示、会話内容の可視化、回答候補の提示が有効な手段です。

時間外・休日対応はFAQ・チャットボット・IVRの組み合わせで補う

有人対応が難しい時間帯でも、一次案内や受付、自己解決を可能にできれば、機会損失や顧客満足度の低下を防げます。緊急性の低い問い合わせを営業時間外へ分散できれば、営業時間内の入電集中も抑えやすくなります。

導入事例:特定の問い合わせの約10%をWebに誘導。FAQへの誘導や時間外対応、番組表の案内などにSMSを活用

問い合わせ傾向の把握は、改善サイクルの起点になる

チャットボットの利用履歴や通話内容のテキストデータを蓄積・分析すれば、問い合わせが集中している手続きや、案内不足でユーザーがつまずいているポイントが見えてきます。分析結果をFAQの見直しや導線改善に継続的に反映すれば、問い合わせ件数の削減と対応品質の向上を同時に図れます。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

応答率を高めるには、定型的な問い合わせのSMS誘導が有効です。後処理時間を削減できれば、1席あたりで確保できる対応時間が増え、全体の運用効率の改善につながる場合があります。一方で、入力の自動化を進めすぎると、オペレーターが内容を十分に確認しないまま対応してしまうおそれがあります。対応履歴や会話記録を見ながら、運用を見直す体制もあわせて整えることが大切です。

主な自動化手段7つと、使い分けの考え方

図:主な自動化手段7つ

重要なのは、自社で解決したい課題に合った手段を見極めることです。手段ごとに着手のしやすさも異なります。

手段 向いている用途 着手難易度
自動音声案内(IVR) 一次受付・問い合わせ内容の振り分け 低
FAQ・ナレッジ整備 問い合わせ前の情報提供・手続き案内 低
チャットボット よくある質問への回答・手続き案内 低〜中
AIボイスボット 簡易な問い合わせ対応・営業時間外対応 中
通話の文字起こし・分析 後処理の効率化・問い合わせ傾向の把握 中
定型業務の自動化(RPA) 転記・入力・照会などの定型作業 中〜高
生成AIによる高度な支援 要約作成・回答案作成・ナレッジ検索支援 高

IVR・FAQ・チャットボットは設定範囲が明確で、低リスクで着手しやすい手段です。一方、RPAや生成AIは業務フローへの組み込みや精度検証に時間がかかりやすいため、まず低リスクな手段で土台を整えてから取り組むのが現実的な順番です。

自動音声案内(IVR)——一次受付の振り分けに使う

あらかじめ設定した音声ガイダンスで問い合わせ内容を振り分ける仕組みです。オペレーターへつなぐ前に用件を整理できるため、応答率の改善やあふれ呼の削減に直結しやすく、最初の一手として選ばれることが多い手段です。

関連記事:IVR(自動音声応答)とは|仕組み・種類・導入判断の基準

AIボイスボット——IVRより柔軟な対話が必要な場合に

音声認識や自然言語処理を活用し、発話内容に応じて自動応答する仕組みです。IVRより柔軟な対話ができるため、営業時間外の対応や定型的な問い合わせの分散に向いています。

チャットボット——Web・アプリ上の自己解決を促す

Webサイトやアプリ上で自動応答する仕組みです。営業時間外でも対応でき、電話以外の窓口で自己解決を促せるため、入電数の抑制に有効です。

FAQ・ナレッジ整備——問い合わせ前の自己解決を増やす

ユーザーが疑問を自分で解決できる環境を整える手段です。問い合わせ件数の削減だけでなく、案内のばらつきを抑えることで顧客体験の向上にもつながります。

通話の文字起こし・分析——後処理と改善に役立てる

音声認識で会話内容をテキスト化し、対応履歴の作成や問い合わせ傾向の把握に活かす手段です。後処理の負担を軽減しながら、案内不足のポイントも把握しやすくなります。

定型業務の自動化(RPA)——転記・照会などの事務処理に

対応履歴の転記やシステム入力、照会作業を自動化する手段です。複数システムをまたぐ単純作業を効率化し、入力ミスの防止や処理時間の短縮につながります。

生成AI——対応支援と後処理の高度化に

問い合わせ内容の要約や回答案の作成、ナレッジ検索の支援に活用できる手段です。オペレーターが必要な情報へ素早くたどり着けるようになり、対応時間の短縮と品質の平準化につながります。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

音声AIと生成AIを組み合わせることで、従来よりも自己解決率を大きく高められる可能性があります。現場では音声認識の精度に目が向きがちですが、発話終了を判定する仕組み(VAD)の調整も重要です。わずかな判定タイミングの差が、ユーザーのストレス軽減や離脱防止につながることもあります。

失敗を防ぐための、進める順番

図:失敗を防ぐための、進める順番

ツールを導入するだけで成果が出るわけではありません。現場の課題を整理し、効果が見込みやすい業務から段階的に進めることが重要です。

① 現状把握とKPI設計

応答率・放棄呼率・後処理時間などを確認し、どこに課題が集中しているかを数値で把握します。改善したい項目と目標値を先に決めておくことで、優先順位が決めやすくなり、導入後の効果も検証しやすくなります。

関連記事:コンタクトセンターの課題6つと、KPIで現状を見える化する方法|段階的な改善の進め方

② 定型・低リスク領域からスモールスタート

IVR・FAQ・チャットボットのような、判断が複雑でない業務から着手するのが基本です。入電の8割を占めるのは定型的な問い合わせであることが多く、まずこの範囲に絞って始めるのが現実的です。影響範囲が小さい領域からスモールスタートすることで、失敗リスクを抑えながら無理のない形で定着させられます。

③ 有人対応との連携設計

複雑な問い合わせへの切り替えタイミングをあらかじめ設計しておきます。切り替えの際に履歴・対応内容を共有できる状態にしておけば、顧客に同じ説明を繰り返させずに済みます。

④ 効果検証と見直し

開始後1か月は週次で到達率や応答率の変化を確認します。想定どおりに機能していない導線は早めに調整することで、運用が形骸化するのを防げます。

⑤ FAQ・ナレッジの継続更新

問い合わせ内容の変化に合わせてFAQや案内内容を更新し続けます。情報が古いままだと自己解決率が下がり、電話への流入が再び増えてしまいます。

⑥ 対象の段階的な拡大

安定して運用できる領域が確認できたら、少しずつ適用範囲を広げます。最初から広範囲に適用すると現場の負担が増すため、無理のない拡大が定着の鍵になります。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

設計段階で注意したいのは、最初から全チャネルを一斉に稼働させないことです。まずは、全体の約8割におよぶ定型的な問い合わせにターゲットを絞り、小規模な構成から着手することが成功の鍵となります。有人対応へ切り替える基準を固定しすぎず、開始後1か月は週次で到達率を確認しながら、導線を柔軟に見直せる体制を整えておく必要があります。

進める際の3つの注意点

図:進める際の3つの注意点

費用対効果は「機能の多さ」ではなく「減らせる負荷」で見る

導入費用や運用コストに対して、どの業務の負荷をどれだけ減らせるかを見極めることが重要です。応答率や後処理時間など改善したい指標とあわせて確認しておけば、導入後の評価もしやすくなります。

導入後も継続的に見直す

運用を始めると、想定どおりに使われていない導線や案内不足が見えてくることがあります。FAQの内容や振り分け条件、シナリオ設計を継続的に見直すことで、実態に合った運用に近づけられます。

自動化だけで完結させようとしない

複雑な問い合わせや個別判断が必要な対応、感情面への配慮が求められる場面では、有人対応が欠かせません。自動化と有人対応の役割を整理したうえで運用することが、顧客体験の維持につながります。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

全自動化は理想ですが、難しい例外対応まで無理に自動化しようとすると、開発工数が必要以上に膨らむことがあります。ROI(投資対効果)を最大化させるためには、すべての業務を網羅しようとするのではなく、まずは定型的な内容の問い合わせにターゲットを絞り、小規模な構成から着手することが成功のポイントです。導入後は、週次で到達率を確認し、KPIに届いていない導線をすぐ見直せる体制が成果を左右します。

まとめ:最適な導線設計に向けて

コンタクトセンターの自動化は、応答率の改善やあふれ呼の削減、後処理の効率化、対応品質の安定化につながる取り組みです。

  • 6課題のうち「あふれ呼・応答率」と「オペレーター不足」は影響が大きく、最初に着手しやすい
  • IVR・FAQ・チャットボットは低リスクで始められ、生成AI・RPAは精度検証に時間がかかる
  • 入電の8割を占める定型問い合わせからスモールスタートし、有人対応との連携設計まで含めて進める

自社に合った手段を選び、有人対応との役割分担まで含めて設計できれば、限られた人員でも運用を安定させやすくなります。

IVR・SMS誘導をまとめて実装するなら——Moments

自動化で解決しやすい6つの課題において、特に対策が急務となる「あふれ呼・応答率の低下」や「営業時間外の対応」は、NTT CPaaSの「Moments」を活用することで、導線設計から実装までワンストップで効率化が図れる領域です。IVR(音声自動応答)を含むSMS・Voice・メールをノーコードで組み合わせられるフロービルダーです。進め方の「②定型・低リスク領域からスモールスタート」で挙げたIVR・FAQ連携も、Momentsひとつで実装できます。まずはあふれ呼が発生しやすい窓口から試してみるのが現実的です。

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  • 混雑時はIVRで一次受付、SMSでFAQページや手続きページへ誘導して入電を分散できる
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「Moments」は、IVR(音声自動応答)を含む各種メッセージングサービス(SMS・Voice・メールなど)を高度に融合させ、顧客との双方向コミュニケーションを自動化するプラットフォームです。ドラッグ&ドロップの直感操作で、担当者が直接フローを構築・修正。開発のリードタイムゼロで、現場主導のスピード感ある運用が可能です。

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監修者 鈴木 伸吾(監修)
この記事の監修 鈴木 伸吾(監修)
NTTドコモビジネスX株式会社
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

目次
  1. 自動化とは「定型業務を仕組み化し、人を判断業務に回す」こと
  2. 自動化で解決しやすい6つの課題
  3. 主な自動化手段7つと、使い分けの考え方
  4. 失敗を防ぐための、進める順番
  5. 進める際の3つの注意点
  6. まとめ:最適な導線設計に向けて

2026.07.03