コンタクトセンターを効率化するには?課題別の手段と進め方
電話集中・あふれ呼・定型対応の多さなど、コンタクトセンターでよくある非効率を整理し、ビジュアルIVR・SMS・チャットボット・Webフォームの使い分けと、着手すべき順番を解説します。
鈴木 伸吾(監修)
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長
2026/07/03
効率化の第一歩は、ツールを増やすことではありません。「電話が集中している」「同じ問い合わせを何度も受けている」——自社で何が起きているかを特定し、それに合った手段を選ぶことから始まります。
問い合わせ件数が増える一方で人材確保は難しくなり、電話だけに業務が偏ると、あふれ呼や放棄呼、オペレーターの疲弊が連鎖的に起きやすくなります。
この記事では、よくある非効率のパターン、それぞれに効く手段(ビジュアルIVR・SMS・チャットボット・Webフォーム)、そして実際にどの順番で進めればいいかを整理しました。
この記事はこんな方へ
- 電話対応が限界に近づいているが、何から手をつければいいか分からない
- ビジュアルIVR・SMS・チャットボット・Webフォームをどう使い分けるか判断したい
- ツール導入を始める前に、進め方の順番を整理したい
電話中心の運用が行き詰まる理由
問い合わせ件数の増加、人材確保の難しさ、そして「早く解決したい」という顧客の期待の高まり——この3つが同時に進んだことで、電話だけに業務が偏る運用は限界に近づいています。
簡単な問い合わせまで電話に集中すると、オペレーターは複雑な対応に時間を割けなくなります。つながらない状態が続けば、機会損失と顧客満足度の低下が同時に進みます。
よくある非効率な状態のパターン
現場で起きる非効率な状態は、実はそれほど種類が多くありません。まず自社がどのパターンに近いかを確認してみてください。
| よくあるパターン | 現場で起きていること | 効く方向性 |
|---|---|---|
| 混雑時・時間外に対応しきれない | あふれ呼・放棄呼が発生。時間外は問い合わせ自体が受けられない | 受付の分散・自己解決導線 |
| 簡単な問い合わせまで有人対応 | 営業時間の確認程度の簡単な用件にもオペレーターの時間が使われる | FAQ・チャットボットで受け皿を分ける |
| 対応後の事務作業に時間がかかる | 複数システムへの転記が発生し、入力ミスも起きやすい | 入力項目・運用フローの見直し |
| チャネル間で情報が連携されない | 電話・メール・チャットの履歴が分断し、顧客に同じ説明を繰り返させてしまう | 履歴の一元管理 |
| 対応方法が統一されていない | 担当者によって案内内容や処理スピードが異なる | 対応手順・案内内容の標準化 |
複数のパターンが同時に当てはまることも多いですが、まず着手すべきは「混雑時・時間外」と「簡単な問い合わせ」の2つです。入電そのものを減らせるため、他のパターンへの負荷も同時に軽くなります。「事務作業」や「対応の統一」は、運用ルールの整備が前提になるため、並行して中長期的に進める位置づけになります。
関連記事:コンタクトセンターの課題6つと、KPIで現状を見える化する方法|段階的な改善の進め方
混雑時・時間外に対応しきれない
入電が重なる時間帯や営業時間外は、限られた人員では対応しきれません。電話がつながらない状態が続けば、不満や機会損失に直結します。受付手段の分散と自己解決導線の整備が、この課題に最も効きます。
サービス▶ あふれ呼対策|IVRによる入電の一次応答・自動化
あふれ呼や時間外呼を受けた際、SMSを自動送信して、顧客をFAQやセルフサービス対応ページに誘導。NTT CPaaS Moments を活用すれば、顧客対応に掛かるオペレーターの稼働を削減したり、営業時間外にも24時間問合せを受付できます。
簡単な問い合わせまで有人対応になっている
営業時間の確認や手続き案内のような定型的な内容まで有人対応になると、オペレーターは複雑な問い合わせに時間を割けなくなります。FAQ・Webフォーム・チャットボットで受け皿を分けることが基本です。
対応後の事務作業に時間がかかる
問い合わせ対応そのものより、記録・履歴入力・関係部署への共有が積み重なって工数を圧迫します。同じ内容を複数システムへ転記している場合は、入力ルールの統一だけでも作業時間と入力ミスの両方を減らせます。
チャネル間で情報が連携されていない
電話・メール・チャットの情報が分かれて管理されていると、顧客に同じ説明を何度もさせてしまいます。窓口をまたいで履歴を確認しやすい状態を整えることが、対応漏れや引き継ぎミスの防止につながります。
対応方法が統一されず、効率が上がらない
担当者によって案内内容や処理の進め方が異なると、対応スピードと品質の両方にばらつきが出ます。対応手順や案内内容を標準化すれば、教育の手間も減り、特定の担当者への依存を防げます。
鈴木 伸吾 (監修)
現場で最も工数を圧迫しているのは、応対そのものではなく「情報の転記」や「履歴確認」です。チャネルごとにデータが分断されていると、同じ内容を何度も入力・確認する必要があり、対応効率の低下につながります。どの工程に時間がかかっているのかを可視化し、優先度の高い部分から改善していくことが重要です。
効率化で実際にどう変わるか
効率化のメリットは「楽になる」という感覚的な話だけではありません。応答率・待ち時間・コストという数字に直接効いてきます。
- 応答率の向上:受付を分散し定型業務を切り分けることで、混雑時でも対応しやすくなる。つながらない状態が続けば顧客の信頼低下に直結するため、優先度の高い改善ポイントになる
- 待ち時間の短縮:自己解決導線を整えることで、有人対応を待たずに解決できる場面が増える
- オペレーターの負担軽減:簡単な問い合わせを切り分けることで、優先度の高い対応に集中しやすくなり、離職の抑制にもつながる
- 運用コストの抑制:FAQ・Webフォーム・チャットボットで自己解決の範囲を広げれば、有人対応が必要な問い合わせを絞り込める
鈴木 伸吾 (監修)
コンタクトセンターの効率化施策はCX向上だけでなく、従業員の負担軽減や離職率の抑制にもつながります。待ち時間が長くなるほど顧客の離脱が増えやすくなり、現場のオペレーターにも心理的な負荷がかかります。呼量を適切にコントロールできれば、採用や教育にかかるコストの抑制にもつながります。
課題別に使い分ける4つの手段
手段は1つに絞る必要はありません。課題に合わせて組み合わせるのが基本です。
| 手段 | 向いている課題 | 活用イメージ |
|---|---|---|
| ビジュアルIVR | IVRではメニュー階層が深くなり、適切な窓口へ誘導しきれない | 着信時にSMSで専用のWebメニューへ誘導。視覚的な操作で最適なFAQや手続きフォームに案内する |
| SMS | 電話後の案内・手続きに手間がかかる | 手続きページやFAQ、予約フォームのURLを短文で送る。あとから見返せて聞き間違いも防げる |
| チャットボット・ボイスボット | 同じ問い合わせが繰り返される・夜間対応が難しい | よくある質問への自動回答や一次受付を24時間対応にできる |
| Webフォーム・FAQ | 問い合わせが電話に集中・自己解決の環境がない | 必要事項を整理して受け付け、簡単な問い合わせは自己解決を促す |
関連記事:ビジュアルIVRとは - IVRとの違い・向いている企業・導入の進め方
関連記事:IVR×SMS連携で電話対応を自動化する方法|仕組み・他チャネルとの違い・導入判断・サービスの選び方
組み合わせる順番に迷ったら、まず「入電そのものを減らす」ビジュアルIVR・SMSから始め、その後に「自己解決を増やす」FAQ・チャットボットを強化するという順序が無理のない進め方です。あふれ呼が起きている状態でFAQだけ整備しても、電話の集中自体は解消しないためです。
鈴木 伸吾 (監修)
音声IVRは階層が深くなるほど操作が分かりにくくなり、途中で離脱される可能性が高まります。視覚的に操作できるビジュアルIVRを活用すれば、利用者が迷いにくくなり、手続きの完了率向上が期待できます。SMSは開封率が90%(※当社調べ)以上と高く、電話からWebへの誘導手段として有効です。
効率化を進める4つのステップ
ツールを導入すること自体が目的ではありません。負荷がどこに集中しているかを把握し、課題に合った形で進めることが重要です。
① 問い合わせ内容を整理し、自動化できる領域を特定する
どんな問い合わせが多いかを見える化し、有人対応が必要なものと自動化しやすいものを切り分けます。営業時間の確認や手続き案内のように定型化しやすい内容から、自動応答・FAQでの対応可否を検討するのが出発点です。
② 自己解決を増やす導線を整える
FAQ・Webフォーム・チャットボットで、顧客が自分で必要な情報にたどり着ける状態をつくります。情報を用意しても見つけにくければ意味がないため、問い合わせ前後の導線まで含めて見直すことが大切です。
③ 受付を分散し、混雑時でもつながる状態をつくる
電話だけに問い合わせが集まる運用では、混雑時にあふれ呼・放棄呼が発生しやすくなります。SMS・Web・チャットへ受付を分散させることで、特定の時間帯への負荷集中を避けられます。
参考事例:SMSを活用したWeb誘導により、特定のお問い合わせの一部を電話以外へ分散
④ 効果を確認し、見直しを続ける
施策の実施は終わりではありません。問い合わせ件数・応答率・待ち時間の変化を確認しながら、想定通りの効果が出ているかを継続的に見ていきます。
鈴木 伸吾 (監修)
注意したいのは、すべてを自動化しようとすることです。問い合わせの中には人による判断が必要なものもあり、無理に自動化を進めるとかえって顧客満足度の低下につながる可能性があります。頻度の高いパターンから優先的に整理し、自己解決できる範囲を広げつつ、必要な場合はスムーズに有人対応へ切り替えられる設計にすると、効率と満足度の両立が図れます。
まとめ
コンタクトセンターの効率化で大事なのは、課題を整理してから手段を選ぶことです。
- 混雑時・時間外の対応しきれなさと、簡単な問い合わせの有人対応集中——この2つから着手するのが効果的
- 入電を減らすビジュアルIVR・SMSを先に、自己解決を増やすFAQ・チャットボットを後に進めると無理がない
- 一度に全部変えず、負荷が最も集中している業務から試して、効果を見ながら広げる
電話に集中する問い合わせを分散させながら、「オペレーターでなくても解決できる問い合わせ」を減らしていく——これが効率化の本質です。
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コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長
「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。
「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。
2026.07.03
鈴木 伸吾 (監修)
単純な増員による解決は、労働人口の減少が進む現在(※ 総務省 生産年齢人口の減少)では限界を迎えています。見落とされがちなのが「放棄呼」の影響で、応答できなかった電話が増えるほど顧客満足度の低下につながる可能性があります。電話という同期型通信の限界を踏まえ、SMSやWebフォームといった非同期チャネルへいかにスムーズに誘導できるかが、コンタクトセンター設計の核心です。