ビジュアルIVRとは - IVRとの違い・向いている企業・導入の進め方

ビジュアルIVRは、電話をきっかけにスマホ画面で手続きを進められる仕組みです。IVRとの違い、自社に向いているかどうかの判断基準、ツール選定・運用のポイントを実務目線で解説します。

鈴木 伸吾(監修)

鈴木 伸吾(監修)

コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

ビジュアルIVRは、電話をきっかけにスマートフォン画面でメニューを表示し、顧客が画面をタップしながら手続きを進められる仕組みです。音声案内を順番に聞いてボタンを押すIVRと違い、「全体を見渡してから選ぶ」操作が可能になります。

この記事では、IVRとの違い・導入後に何が変わるか・自社に向いているかどうかの判断基準・ツール選定と運用のポイントを、実務目線でまとめています。

この記事はこんな方へ

  • 「ビジュアルIVR」という言葉を見かけたが、IVRと何が違うのか分からない
  • あふれ呼や放棄呼を減らす手段を探している
  • スマホ対応の問い合わせ導線を整備したいが、導入ハードルが分からない

ビジュアルIVRの仕組み——電話とWebをつなぐ

ビジュアルIVRを利用している場合、顧客が電話をかけてくると、IVRでのご案内後自動でSMSが送られます。そのURLを開くと、スマートフォン画面にメニューが表示されます。顧客はタップで手続きを選び、FAQ・フォーム・チャット・担当部署への転送など、目的に応じた対応へ進みます。

通話中に操作を完了させる必要はなく、電話を切った後でも画面上で手続きを続けられます。企業側はメニュー構成や分岐をいつでも編集でき、問い合わせの傾向や混雑状況に合わせて導線を調整できます。

IVRとどう違うのか

IVR(自動音声応答)は、案内音声を順番に聞きながら番号を押して分岐を進む仕組みです。ビジュアルIVRとの最大の違いは「情報の見せ方」にあります。

  IVR(音声) ビジュアルIVR(画面)
操作方法 音声を聞いて番号入力 画面のメニューをタップ
選択肢の把握 順番に聞く必要がある 全体を見てから選べる
自己解決の範囲 音声分岐内に限られる FAQ・フォーム・チャットへ直接遷移
待ち時間 オペレーターへの転送の場合、接続待ちが発生 Web誘導で待機なしの対応が可能
対応時間 オペレーターへの転送が必要な場合稼働時間に依存 Web経由で24時間の自己解決が可能

音声案内は階層が深くなるほど離脱が増えます。ビジュアルIVRは選択肢を画面に並列で表示するため、この構造的な問題を回避できます。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

音声との決定的な違いは「情報提示の並列性」です。音声では順番に聞く必要がある案内も、視覚化することで利用者は短時間で目的を把握できます。階層が深くなるほど音声IVRは離脱が増えますが、ビジュアルIVRはその問題を画面で整理して解決できます。

顧客がビジュアルIVRにたどり着く3つの経路

図:顧客がビジュアルIVRにたどり着く3つの経路

ビジュアルIVRをどこから誘導するかで、使われ方とカバー範囲が変わります。

経路 特徴と使われ方
電話着信時のSMS自動送信(最多) 電話をかけると自動でSMSが届く。URLをタップするだけで遷移でき、通話後も手続きを継続できる
WebサイトやアプリからのリンクURL Webサイト上の問い合わせボタンから直接遷移。電話をかける前に自己解決を促せるため入電数の抑制につながる
QRコード・紙媒体からのアクセス 請求書・商品パッケージ・店頭ポスターなどに掲載。電話番号を探す手間なくその場で手続きへ誘導できる

ビジュアルIVR導入の効果

図:ビジュアルIVR導入の効果

ビジュアルIVRを導入することで、コンタクトセンターと顧客の両方に効果があります。

コンタクトセンター側の変化

最も直接的な効果は「オペレーターへの入電数が減ること」です。定型的な問い合わせや手続きが画面上で完結するようになると、オペレーターが対応すべき問い合わせが絞られます。本当に対応が必要な入電のみオペレーターが対応することにより、オペレーター稼働に余裕ができ、結果的に有人対応の質も上がります。

また、あふれ呼(つながらずに切れてしまう電話)の抑制にも効果があります。入電後にWebメニューへ誘導できれば、混雑していても顧客は画面上で手続きを完了することができます。当社の事例では、再入電数と応対時間を約半分に削減した実績があります。

SMSとの組み合わせで通話時間も短縮できます。通話中にすべての対応を完了させる必要がなくなるため、回線の占有時間が減り、通信コストの最適化にもつながります。

サービス
NTT CPaaS NTT CPaaS

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顧客側の変化

電話をかけた顧客は長い自動音声案内を順番に聞く必要がなくなります。画面上で選択肢を一覧できるため、「どれを押せばいいか分からない」という迷いが減り、聞き間違いや番号入力ミスもなくなります。

また、夜間・休日でもFAQやフォームへ直接アクセスできるため、オペレーターの稼働時間に関係なく手続きを進められます。電話の混雑を気にせず使える点も、特に急いでいない問い合わせでは利便性が大きく上がります。

関連サービス:モバイルウェブ ビジュアルIVR|問合せを最適なチャネルへ誘導し自己解決へ導く

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

SMS連携によるあふれ呼対策として、電話からWebへスムーズに誘導することで機会損失を防ぎながらオペレーター対応の負荷を分散できます。FAQや手続き導線への誘導が定着すれば、運用コストや教育負担の軽減も期待できます。

自社に向いているかどうかの判断基準

ここまでビジュアルIVRのメリットについて紹介してきましたが、すべての企業に最適とは限りません。問い合わせの性質・顧客層・入電量・運用体制の4点で判断する必要があります。

判断軸 向いている 向いていない
問い合わせの性質 定型的な内容が多い(配送確認・契約変更・手続き案内など) 高度な個別判断や専門的な対話が中心
顧客層 スマートフォン利用が一般的な層が多い 高齢者中心でデジタル利用率が低い(※音声IVRとの併用で一定対応可)
入電量 入電が多く、待ち時間やあふれ呼が問題になっている 入電数が少なく、FAQ整備やWeb導線改善のほうが優先度が高い
運用体制 利用データをもとに継続的に改善できる体制がある 導入後に改善できるリソースがない

高齢者比率が高い顧客層でも、音声IVRとの並列運用を前提に設計すれば対応可能です。どちらか一方に絞る必要はありません。

問い合わせ件数が少ない段階では、まずFAQページやWebフォームの整備が先決です。ビジュアルIVRはその上位の仕組みとして位置づけてください。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

同じようなお問い合わせが一定数発生している現場では高い投資対効果が見込めます。ただし「複雑な問題を解決するため」ではなく「単純な問い合わせを電話対応から切り離すため」の導入が効果を出しやすいです。この切り分けを誤ると開発工数だけが膨らみROIが悪化します。

導入前に知っておくべき注意点

図:導入前に知っておくべき注意点

① 導線設計の質が成果を左右する

ツールを入れれば自動的に改善するわけではありません。メニュー構成と分岐の設計が適切でなければ、顧客はかえって迷ってしまい、結局電話に流れてしまいます。

過去の問い合わせデータを整理し、「FAQで対応できる」「フォームで完結できる」「有人対応が必要」の3種類に分けたうえで、それぞれに対応する導線を設計することが基本です。選択肢を増やせばいいわけではなく、優先度の高い導線から絞り込んで整備することが大切です。

② SMS送信元の信頼性を確認しておく

電話着信後にSMSでURLを送る設計では、送信元が不明確だと不審メッセージと判断されURLが開かれないことがあります。公式番号からの送信であることを事前にWebサイト上で案内するなど、正規の通知であることを示す工夫が必要です。

③ 継続的な改善を前提に運用計画を立てる

導入後は利用ログを見ながら改善を続ける必要があります。どのメニューで離脱が多いか、どの手続きが完結しているかを把握し、文言やボタン配置を定期的に見直してください。変更のたびに外部ベンダーへ依頼が必要なツールでは、このサイクルが回りにくくなります。

鈴木 伸吾

鈴木 伸吾 (監修)

SMS送信元番号の信頼性は見落とされがちです。共通ショートコード等を利用しない場合、不審なリンクと受け取られクリック率が低迷することもあります。また、必要に応じてワンタップで電話対応へ戻れる設計も重要です。

ツールを選ぶときの3つの確認ポイント

図:ツールを選ぶときの3つの確認ポイント

ビジュアルIVRのツール選択時には、機能の多さももちろん大事ですが、導入後に運用・改善しやすいかどうかを優先して選んでください。

① 既存システムと連携できるか

顧客管理システムや予約システムと連携することができれば、画面で入力した情報を自動で取り込めます。オペレーターの転記作業が減り、対応のスピードと正確性が上がります。将来的にAI連携や機能追加を想定しているなら、APIで拡張しやすい設計かどうかも確認してください。

② 現場で自社更新できるか

問い合わせ傾向は季節や施策によって変わります。変更のたびに外部ベンダーへ依頼が必要な構造では、改善のスピードが落ちます。管理画面から現場担当者が自分でメニューや文言を変更できるツールを選ぶことが、長期的な運用コスト削減につながります。

③ 利用ログと離脱ポイントを分析できるか

どのメニューがよく使われているか、どこで離脱が起きているかを把握できなければ、改善の方向性を判断できません。自己解決率・再入電率・放棄呼率・平均通話時間(AHT)を導入前後で比較できる分析機能があるかを確認してください。

導入を具体的に検討するタイミング

以下のいずれかに当てはまるなら、ビジュアルIVRの導入を具体的に検討する価値があります。

  • 繁忙期や時間帯によっては電話が混雑し、顧客の離脱や放棄呼が発生している
  • 定型的な問い合わせ(配送確認・手続き案内・契約変更など)が全体の3割以上を占めている
  • オペレーターの採用・育成コストが増加しており、人を増やすだけでは限界を感じている
  • 音声IVRのシナリオが複雑になりすぎて、更新・改善に手間がかかっている
  • 問い合わせデータを活用できておらず、どこに課題があるか把握できていない

音声IVRからの完全な切り替えは必要ありません。SMSで画面に誘導するところからスモールスタートし、効果を確認しながら範囲を広げていくのが現実的な進め方です。

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監修者 鈴木 伸吾(監修)
この記事の監修 鈴木 伸吾(監修)
NTTドコモビジネスX株式会社
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。

目次
  1. ビジュアルIVRの仕組み——電話とWebをつなぐ
  2. ビジュアルIVR導入の効果
  3. 自社に向いているかどうかの判断基準
  4. 導入前に知っておくべき注意点
  5. ツールを選ぶときの3つの確認ポイント
  6. 導入を具体的に検討するタイミング

2026.06.02