中小企業がIVRを導入すべき状況と、選び方・運用のポイント
「電話対応で業務が止まる」「定型問い合わせが多い」「取りこぼしが続く」——こうした状況のどれかに当てはまる中小企業向けに、IVR導入の判断基準・選定5項目・運用のポイントを整理しています。
鈴木 伸吾(監修)
コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長
2026/06/08
電話対応で1日に何度も作業が止まる、定型問い合わせに時間を取られている、忙しい時間帯に取りこぼしが続く——こうした状況は、人を増やさなくてもIVR(自動音声応答)で改善できる余地があります。クラウド型であれば専用機器不要・初期費用なしで始められるため、中小企業でも導入のハードルは低くなっています。この記事では「自社に必要かどうか」の判断から、選定・運用のポイントまで実務目線で整理しています。
この記事を読むと、次の3つを判断できます。
- 自社がIVR導入に向いているかどうか(3つの状況チェック)
- サービス選定で外せない5つの確認ポイント
- 導入後に効果を出すための運用設計の考え方
まず確認——自社はIVRが必要な状況か
IVRが効果を発揮しやすいのは、次の3つのどれかに当てはまる状況です。逆に、電話件数が少なく対応の負荷も軽微であれば、導入を急ぐ必要はありません。
状況①電話対応で業務が頻繁に止まる
ヘルプデスクなど専用番号を用いずに電話取り次ぎを行っている場合、電話の度に作業を中断する必要があり、本来の業務に支障をきたしている可能性があります。このような状況では、電話対応が特定の担当者に偏ったり、応対品質が電話を受けた担当者によってばらつくなど、さまざまな問題が発生していることが考えられます。
IVRを導入することで、一時受付を自動化できるため取り次ぎの回数を削減できます。また用件によって適切な担当者へ直接つなぐことができるので、応対品質を維持し、顧客満足度の改善も期待できます。
関連記事:IVR(自動音声応答)とは|仕組み・種類・導入判断の基準
状況②定型問い合わせが多い
営業時間・所在地・料金など、同じ内容の問い合わせが繰り返し入る場合には、IVRでの自動化対応に容易に切り替えることができます。同じような問い合わせ対応は1件1件の応対時間は短く済んでも、積み重なると工数が大きくなっていきます。
定型的な問い合わせには、IVRとSMSを組み合わせた対応が効果的です。まずIVRで用件を確認し、用件にあったFAQページやフォームのURLをSMSにて送信します。このようにすることでユーザーの自己解決を促し、電話対応の件数を削減することができます。
関連記事:IVR×SMS連携で電話対応を自動化する方法 - 仕組み・他チャネルとの違い・導入判断・サービスの選び方
状況③あふれ呼が機会損失になっている
繁忙時間帯に受電が増え、あふれ呼が発生していたり、折り返し対応が発生している場合にもIVRは有効です。IVRであれば営業時間外・繁忙時も録音受付で一次対応を継続することができます。折り返し対応が必要な場合でも、内容を整理して担当者へ引き継ぐことができるので、対応の抜け漏れを防ぐことができます。
IVRの仕組みと、従来の電話対応との違い
IVRは着信時に音声ガイダンスを流し、発信者が番号を押して用件を選ぶと、選択内容に応じて担当部署への転送・定型案内・録音受付などの処理を行う仕組みです。担当者へつなぐ前に用件が整理されるため、「誰が電話を取っても状況を一から聞き直す」という手間がなくなります。
| 比較軸 | 従来の代表電話対応 | IVR導入後 |
|---|---|---|
| 受付方法 | 着信した担当者が用件を聞き取り、適切な部署を探して取り次ぐ | 着信時に音声ガイダンスが流れ、番号入力で用件を自動振り分け |
| 担当者の負担 | 対応できる人間に負担が集中する。取り次ぎのたびに作業が止まる | 一次対応を自動化。担当者は本当に必要な対応に集中できる |
| 不在・繁忙時 | 電話に出られない。折り返し対応で後手に回りやすい | 録音受付に自動切り替え。情報を記録して折り返しにつなげる |
| 時間外対応 | 人がいないと電話は取れない | 24時間365日、音声案内・録音受付で一次対応を継続できる |
クラウド型IVRは専用機器を社内に設置する必要がなく、管理画面から設定できます。営業時間の案内変更・転送先の切り替えといった操作を自社で完結できるため、ベンダーへの依頼コストや変更リードタイムが発生しません。
鈴木 伸吾 (監修)
クラウド型IVRの強みは運用に合わせて内容を変えやすく、必要に応じて機能を広げやすい点です。繁忙期や臨時対応に合わせてガイダンスを更新でき、状況に応じた受付体制を作りやすくなります。API連携を使えば顧客データと照合して振り分けるなど、より高度な運用にも発展させやすいのが特長です。
導入で期待できる4つの効果
IVRを導入することで期待できる効果を見ていきましょう。
①業務の中断が減る
電話対応によって本来の業務の手を止めてしまっている、という状況は多々あります。IVRを導入し、取り次ぎや定型対応を自動化することで、人が対応する電話が減り、結果的に作業を中断しなくてはいけない回数が減ります。特に同じような問い合わせが多い場合は、IVRとSMSで完結する件数が増えるので、担当者が本来の業務に使える時間が増え、効率化につながります。
②繁忙時・不在時でも受付を止めない
着信が集中する時間帯でも用件ごとに振り分けて電話対応が可能になるため、対応の優先順位をつけやすくなります。また担当者が不在の時は録音受付への切り替えもできるので、その後の引継ぎ業務の手間がスムーズになり、コミュニケーションエラーや応対漏れを抑えることができます。
③24時間365日の一次受付が可能になる
IVRを導入することで、営業時間外や休日でも音声案内・録音受付を稼働させることができます。またIVRとSMSを組み合わせることで定型的な問い合わせは、深夜や休日など営業時間外であってもユーザーが自己解決することができます。
担当者の対応が必要な内容でも、録音受付を設定できるので、その後の折り返し対応への橋渡しとしても機能します。
④着信データが改善に使える
IVRを導入することで、時間帯別の着信件数をはじめとしたデータの分析が可能になります。一般的な受電業務では問い合わせ内容による時間帯別の着信数の分析は難しいですが、IVRであれば容易にデータ化でき、Webサイトやサービス改善に役立てることができます。また選ばれたメニュー・離脱タイミングなどのデータが蓄積されるため、人員配置やガイダンス内容の見直しを客観的な根拠を持って行うことができます。
鈴木 伸吾 (監修)
業務効率化を進めるには、定型的な問い合わせをIVRで自動対応できるようにすることが重要です。有人対応が必要な用件に集中でき、応対時間の短縮にもつながります。24時間の一次受付は、時間外の取りこぼしを減らし、繁忙時間帯の負荷分散にも有効です。
サービス選定で確認すべき5つのポイント
機能の多さだけで選ぶと、使わない機能に費用を払い続けたり、運用中に変更のたびベンダーへ依頼が必要になったりするミスマッチが起きます。以下の5点を軸に比較してください。
①費用が規模に合っているか
IVRを導入するには初期費用・月額基本料・通話料・オプション料金など、コストがかかります。IVRで実現したいことが増えたり、フローが複雑化すればするほど費用は大きくなっていくため、そのコストが見合うかどうかを見極めることが大切です。また着信件数が増えたときのコスト変化も長期的な視点で重要になります。想定外の従量課金が積み重なると、費用対効果が合わなくなる可能性があるので、着信数が増えたことも考慮して見積りを行い、サービスを選定しましょう。
②必要な機能が揃っているか
IVRで実現したいことを明確にし、必要な機能が揃っているかを確認することが重要です。部署別振り分け・時間帯別アナウンス切り替え・録音受付・担当者転送の有無など、自社の問い合わせ内訳や解決したい課題とその優先度と照らし合わせて検討しましょう。このすり合わせには現場で電話を受けている方の生の声が重要になるので、ヒアリングを欠かさないようにしましょう。
③ガイダンスを自社で変更できるか
サービス選定を行う際に、ガイダンスやSMS内容を管理画面から自由に変更できるか、またはベンダーへ依頼する必要があるかは、重要な比較軸になります。。ベンダーへの依頼の場合、反映までの時間がかかったり費用が発生することがあります。はじめてIVRを導入するときは、より自由に設定が可能な管理画面から変更できるサービスがおすすめです。
また管理画面からガイダンスを変更できるサービスの場合、臨時休業や年末年始など長期休暇の場合のガイダンスの切り替えも自由に設定ができます。
④有人対応への切り替えが柔軟か
IVRを導入すると、IVRでは完結できない問い合わせに対しては有人での対応が必要になり、その切り替えが発生します。その際に柔軟に切り替えが可能か、顧客満足度の観点でも確認しておく必要があります。
緊急時・混雑時の転送先切り替えや時間帯ごとの転送ルール、担当者不在時の動作など発生しうる状況を想定して、どのような対応ができるのかをデモを含めて確認しましょう。
⑤SMS・Webサイト・CRMとの連携ができるか
IVRをSMSやWebサイトと組み合わせることで、より対応に幅を持たせることができます。SMSでFAQページURLや問い合わせフォームのURLを送信することで、有人対応することなく、必要な情報を届け自己解決へ導くことができます。またCRMとの連携が可能なサービスであれば、入電情報を自動で管理することができ、折り返し対応がスムーズになります。
このようにIVRにとどまらず、周辺システムとの連携も確認しておくとより効果的です。
鈴木 伸吾 (監修)
ガイダンスが複雑になるほど利用者が迷いやすく、途中で離脱が増えやすい傾向にあります。ガイダンスを自社で変更できるかは、運用の手間やコストに直結する重要なポイントです。ビジュアルIVRを活用すると、画面で選択できるため操作の負担を抑えやすくなります。
導入後に効果を出す3つの運用ポイント
IVRは入れれば自動的に効果が出るわけではありません。最初の設計と、データを見ながら継続的に調整する姿勢が効果の大半を左右します。
①定型問い合わせから小さく始める
最初から幅広い用件を詰め込むとガイダンスが複雑になり、利用者が迷って途中で切られる原因になります。営業時間案内・所在地確認など内容が決まっている用件から自動化し、運用が安定してから振り分けの範囲を広げていく進め方が現実的です。
②ガイダンスはシンプルに保つ
選択肢は必要最小限に絞り、「○○の方は1番」のように操作が一目で分かる案内にします。「その他」を必ず用意し、どの選択肢にも当てはまらない場合はオペレーターへ自動転送するなど、行き止まりを作らない設計が重要です。説明が長くなるほど離脱率が上がるため、案内文は簡潔さを優先してください。
③データを見て定期的に見直す
着信件数・選ばれたメニュー・ガイダンス途中の離脱率を定期的に確認します。想定と違うメニューが多く選ばれている場合は案内文の表現を調整し、利用が多い用件は案内順を前に出す、といった細かい改善が応対完了率と対応品質を底上げします。
鈴木 伸吾 (監修)
少人数の組織では1本の電話でも業務が止まりやすく、その影響が大きくなります。定型的な問い合わせを自動化できれば、電話に割かれる時間を減らし本来の業務に集中しやすくなります。まずは問い合わせの多い用件から小さく自動化し、データを見ながら段階的に範囲を広げていくと安定します。
コミュニケーション・フロービルダー「Moments」について
「Moments」は、IVR(音声自動応答)を含む各種メッセージングサービス(SMS・Voice・メールなど)をノーコードで組み込めるフロービルダーです。ドラッグ&ドロップの直感操作で、担当者が直接フローを構築・修正。開発のリードタイムゼロで、現場主導のスピード感ある運用が可能です。
0120・050等の国内番号に対応し、設定代行を含むスムーズな立ち上げを支援する日本語サポートを提供しているため、導入初日から迷わず運用できます。
サービス▶ Moments(コミュニケーション・フロービルダー)- ノーコードで始める業務連絡の自動化
「Moments」は、IVR(音声自動応答)を含む各種メッセージングサービス(SMS・Voice・メールなど)を高度に融合させ、顧客との双方向コミュニケーションを自動化するプラットフォームです。
まとめ——IVR導入の判断基準
IVRが必要かどうかは、電話対応の現状から判断できます。「業務が頻繁に止まる」「定型問い合わせが多い」「取りこぼしが続く」のいずれかに当てはまるなら、導入効果は出やすい状況です。
- クラウド型IVRは専用機器不要で小さく始められる。まずは定型問い合わせの自動化から着手
- 選定の軸は「費用」「必要機能」「自社でガイダンスを変更できるか」「有人切り替えの柔軟性」「SMS・Web連携の可否」の5項目
- 導入後の効果はガイダンス設計とデータを見た継続改善で決まる。シンプルに始めて、段階的に適用範囲を広げていくのが、成功のための最も確実なアプローチ
よくある質問
既存の電話番号のまま使えますか?
多くのクラウド型IVRサービスは、既存番号をそのまま使える番号ポータビリティまたは着信転送による連携に対応しています。ただしサービスによって対応範囲が異なるため、契約前に確認してください。
ITに詳しくない担当者でも管理できますか?
クラウド型IVRは管理画面から設定変更できるサービスがほとんどで、プログラミングの知識なしに操作できる設計が一般的です。NTT CPaaSの「Moments」はドラッグ&ドロップでシナリオを変更できるため、日常的なガイダンス更新を担当者自身が行えます。
IVRとクラウドPBXは何が違いますか?
クラウドPBXは電話回線全体をクラウドで管理するシステムで、IVRはその機能の一部です。IVRは「着信時の自動案内と振り分け」に特化した仕組みで、クラウドPBXに組み込まれていることも、単独サービスとして利用することもあります。電話対応の入り口部分だけを改善したい場合は、IVR単独の導入から始めるのが現実的です。
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コミュニケーション・プラットフォームサービス部 部長
「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。
「NTT CPaaS」の事業責任者および技術統括として、APIを活用した企業のDX推進とコミュニケーション変革を牽引。NTTグループの通信基盤を活かした次世代プラットフォームの構築を指揮している。 また、通信の利便性と安全性を両立させる専門家として、フィッシング対策協議会のメンバーに参画。詐欺情報の分析や被害抑制に向けた活動を通じ、安心・安全なデジタル社会の実現に寄与している。
2026.06.08
鈴木 伸吾 (監修)
電話の待ち時間が長いほど顧客の離脱は増えやすくなります。課題を「人手不足」で片付けず、取りこぼしや待ち時間による機会損失を可視化することが重要です。入電数だけでなく、電話で作業が中断される回数にも着目して導入を判断するとよいでしょう。